「本を読む子は学力が高い」と聞いたことがある人は多いだろう。じつは、子ども自身がどれだけ読むかではなく、「家に何冊の本があるか」も、その後の学力に関係するという。家庭の蔵書数と、子どもが大人になったときの国語力や計算力との関係を調べた研究がある。しかも、単純に「本は多ければ多いほどいい」というわけでもないようだ。では、家に何冊以上の本があると、子どもの学力に差が表れるのか。『医師が教える 子どもの習慣50の基本』から一部抜粋してお届けする。(ダイヤモンド社書籍編集局)

【小児科医が解説】家に「本」が何冊以上あると、子どもの学力は優位になるか?Photo: Adobe Stock

家に本がないとダメ?

 ある研究では、80冊以上の本がある家で育つと、大人になったときに国語力、計算力が得られると示されています。ただ冊数が多ければ多いほどよいかというとそうではなく、80~350冊ある家庭で育った子が大人になったときの学力で優位と示されていて、500冊以上では違いが見られなかったとのことです。

 米国の一般家庭の平均蔵書数は114冊。スウェーデン、ノルウェーなどの北欧では13~14%の家庭が500冊以上だったそうです(7)。一方、2023年度の文化庁の調査では日本人の約60%が1か月間に1冊も本を読まなかったと答えています(8)。

 当クリニックでも乳幼児健診のときに「生後3か月のときから、絵本を毎日読んであげてくださいね」とお伝えしています。子どもに読み聞かせをすると、次のようによいことがたくさんあります。
●語彙力が伸びる
●理解力が上がる
●数の概念、算数力が上がる
●批判的思考法を身につけられる
●想像力を養うことで脳の構造そのものも変えられる

どのくらいの本を読めばいいの?

 2023年に発表された米国の1万人以上の思春期の子どもたちを対象にした研究では、幼いころから娯楽として(強制ではなく)本を読んでいた子ほど脳機能が高かったとのことです。その研究によると、1週間に12時間の読書が最適とされています(9)。

 オーディブルなど、聴くだけの本もよいのですが、小児期に、6~10%程度いるといわれるADHDおよびASDの特性のある子どものなかには、視覚優位で、聴覚情報の残らない子がいます。この子たちは図鑑・辞典系を好み、文字が多い物語系の本を避ける傾向にあります。このような特性が見られる場合には、音声だけでなく、挿絵の多い物語の読み聞かせをするとよいでしょう。

 ソクラテスの言葉にある「教育とは炎を灯すことで、器を満たすことではない」のとおり、まずは家に本がたくさんある環境、または図書館などから借りて本がある環境を作ってみましょう。そのなかで本を読む楽しさ、おもしろさを大人と一緒に味わうことで、子どもの脳の発達が促され、その後の学習効果が高まるといえます。

日本の子どもに見られるマンガの影響

「家庭での本の冊数をカウントする」研究では、マンガについては明示的に記していないことがほとんどで、一般にはマンガは含まないと考えるのが妥当です。ではマンガは役に立たないかというとそうでもありません。

 日本ではマンガに触れる機会が多いため、12歳ごろの子どもはほぼ全員、何か物語を書ける一方、マンガに触れる機会がない他国の12歳で物語を書けるのは約半数という研究があります(10)。マンガが脳機能や言語発達に寄与しているといえそうです。

 読む・読まないは、いったん置いておいて、ぜひお家の中に本がある環境をつくってみてくださいね。

7 World Economic Forum. This is how a bookish home helps a child to thrive. [cited 2026 Jul 31]. Available from: https://www.weforum.org/stories/2018/10/a-home-library-gives-kids-a-major-advantage/
8 朝日新聞. 本を読まない人が6割超 スマホに時間とられる? 国語世論調査[cited 2026 Jul 31]. Available from: https://digital.asahi.com/articles/ASS9K26DBS9KUCVL03DM.html
9 Sun YJ, Sahakian BJ, Langley C, et al. Early-initiated childhood reading for pleasure: associations with better cognitive performance, mental well-being and brain structure in young adolescence. Psychol Med. 2024;54(2):359-373. doi: 10.1017/S0033291723001381.
10 中澤潤. マンガの読解過程とリテラシー. [cited 2026 Jul 31]. Available from: https://psych.or.jp/wp-content/uploads/2022/01/96-23-24.pdf
伊藤明子(いとう・みつこ)

赤坂ファミリークリニック院長/小児科医/MD, MPH/BCIA認定ニューロフィードバック認定医
NPO法人Healthy Children, Healthy Lives代表理事。
東京外国語大学卒、帝京大学医学部卒、東京大学大学院医学系研究科修了。医師になる前から同時通訳者として天皇陛下や歴代首相、米国大統領の通訳を務め、現在も医学系会議を中心に活動している。通訳の仕事をしながら2児をもうけたあと、40歳で医学部を受験し、医師に。卓越した英語力を武器に、海外の学術論文から日々最新の情報をアップデートしている。メディア出演も多く、わかりやすい説明と親しみやすい人柄で子どもはもちろん、その親からの信頼も厚い。著書に『医師が教える 子どもの食事 50の基本』(ダイヤモンド社)などがある。