「片づけなさい!」と何度言っても、なかなか動いてくれない。そんな子どもの姿に、ついイライラしてしまう親も多いのではないだろうか。じつは、子どもの整理整頓は、親のちょっとした声がけやサポートによって改善できることが、学術的な研究でも示されているという。
では、子どものやる気を引き出し、「自分から片づける子」に近づけるためには、どんな言葉をかければよいのか。『医師が教える 子どもの習慣50の基本』から一部抜粋してお届けする。(ダイヤモンド社書籍編集局)

「片付けをやる子」を作り出す、親の関わり方・ベスト1【小児科医が解説】Photo: Adobe Stock

学術的根拠のある「整理、片づけ」の方法がある

 学術的な研究で、子どもの「整理整頓」は、適切なサポートで改善できることがわかっています。ADHDの子どもはとくに整理整頓が苦手ですが、有効な方法が研究で示されています。これはADHDではないお子さんにも効きそうです。

 医学的に効果が認められている2つのアプローチを紹介します。

①整理整頓スキルの練習
(OST=Organizational Skills Training=整理整頓力・情報整理力・段取り力スキルトレーニング)

 米国でADHDの子どもたちを対象に、OSTの1つであるHOPS(Homework, Organization, and Planning Skills=宿題・整理整頓・計画スキル)トレーニングの研究が行われました。

 学校環境での無作為化研究です。対象は7つの小学校でADHDと診断された11~14歳の子ども、のべ47人です。

 各学校のスクールカウンセラー(心理士の先生)が、

●プリントのファイリングの仕方
 紙をバラバラのまま放置せず、必ずファイリングする

●カバンのなかのモノの入れ方
 仕分けポケットに何を入れるかをあらかじめ決めて、必ず決まったポケットに決まったモノを入れる

●教室のロッカーのモノの置き方
 ロッカーの上段、下段に何を置くか決める

 といったことを週2回、毎回20分以内でレクチャーしました。

 1か月後からは週1回の確認タイムを設けて、合計3か月トレーニングを行い、行う前と後で、対象の子どもが片づけ・整理整頓ができたかどうかを評価したところ、有意に改善したという結果でした。

②親や学校によるサポート(行動的介入)

 親や先生のサポートも重要です。

 具体的には、できたことをほめて正しい習慣をポジティブに強化します。またルールをわかりやすく目に見える形で掲示することも大切です。

 そして、毎日の取り組みを記録する「カード」「カレンダー」などを活用します。これによってできたことが可視化され、子どもは目に見えるので自信がつき、やる気につながります。これらはとくに幼いお子さんに効果的ですよ。

毎日3分から始めよう

 家庭で行う場合は、まずモノを置く場所、部位、領域を決めます。

●場所
 
リビング、子ども部屋など

●部位
 机、本棚、カバンなど

●領域
 机の上、机の左側の引き出し、本棚の上の段、カバンの内ポケットのなかなど

 次に、決めた場所での置き方や使い方を決定します。

●置き方
 本は背表紙を手前にして立てて並べる、ペンはキャップを閉めてペン立てに入れるなど

●使い方
 必要なものを取り出したらもとの場所に戻す、机の上に文具を放置しない、プリントは重ねずにファイルに入れるなど整理して立てておくなど

 あらかじめ張り紙で掲示しておいて、くり返し練習します。

 大人がルールどおりできているかをこまめに確認し、違ったら正しい方法を一緒に確認、フィードバックをすることで、スキルが身につきやすくなります。
 できていたら、その場でリアルタイムでほめましょう!

 片づいた状態の写真か図を提示するのもよいですね。目指すゴールがわかります。
 子どもの年齢によりますが、できるだけシンプルな方法で、毎日3分でよいのでぜひやってみてください。

「ダメ出し」はやめて

 組織化していることが大事なので、毎日の片づけ時間を決めて、タイマーをかけ、本はここ、ゲームはここと「もとの場所」に戻し、いらないものはゴミ箱にぽい! とします。

 フィードバックと聞くと、「違う、そこじゃない」「まだきれいになってないよね?」などと「ダメ出しする」ことだと思うかもしれませんが、それではうまくいきません。ポイントは次のとおり。

●できていたらほめる
●できていなければ、どう違うか、正しい方法は何かをフィードバックする

 会社や家庭で、できていないことだけを見つけられて上司や家族からダメ出しされていたら大人もやる気をなくしますよね。それと同じです。

親も一緒に付き合うことが大切

 忙しい大人は、子どもに自発的・自律的に片づけられるようになってほしいという思いから、「システム」を作ったら、あとは子どもにまかせて、別のことをやりたいかもしれません。

「上手にできたね。明日から自分からやろうね」
 と伝えて、親はもう参加しないという態度。

 しかし、残念ながらそれだとうまくいきません。
「片づけの3分間」は付き合ってください。

 一度身についた片づけの習慣は、一生モノになります。
 最初は面倒かもしれませんが、ぜひ付き合ってくださいね。

13 Langberg JM, Epstein JN, Becker SP, Girio-Herrera E, Vaughn AJ. Evaluation of the homework, organization, and planning skills (HOPS) intervention for middle school students with ADHD as implemented by school mental health providers. School Psych Rev. 2012;41(3):342-364.
伊藤明子(いとう・みつこ)

赤坂ファミリークリニック院長/小児科医/MD,MPH/BCIA認定ニューロフィードバック認定医
NPO法人Healthy Children, Healthy Lives代表理事。東京外国語大学卒、帝京大学医学部卒、東京大学大学院医学系研究科修了。医師になる前から同時通訳者として天皇陛下や歴代首相、米国大統領の通訳を務め、現在も医学系会議を中心に活動している。通訳の仕事をしながら2児をもうけたあと、40歳で医学部を受験し、医師に。卓越した英語力を武器に、海外の学術論文から日々最新の情報をアップデートしている。メディア出演も多く、わかりやすい説明と親しみやすい人柄で子どもはもちろん、その親からの信頼も厚い。著書に『医師が教える 子どもの食事 50の基本』(ダイヤモンド社)などがある。