ちょっと確認するだけのつもりが、気づけば何度もSNSを開いている。新しい投稿や通知が来ていないか、つい気になってしまう。「そろそろやめよう」と思っても、なかなかやめられず、自分の意志の弱さを感じたことがある人もいるだろう。しかし、SNSを何度も見てしまうのは、単に意志が弱いからとは限らない。実は、その背景には、人間の脳に備わった「報酬」に関する仕組みが関係しているという。そんな仕組みを『すべて本能のせい』から解説する。(ダイヤモンド社書籍編集局)
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なぜ「もう見ない」と決めても、SNSを開いてしまうのか?
寝る前に少しだけSNSを確認するつもりが、いつの間にか30分も経っていた。
仕事や勉強の合間にスマホを手に取ったら、ついSNSを開いてしまった。
そんな経験はないだろうか。
SNSには、友人の近況やニュース、趣味に関する情報など、さまざまなものが流れてくる。
もちろん、それらを見ること自体が楽しい場合もあるだろう。
しかし、特に見たいものが決まっていなくても、無意識のうちにアプリを開いてしまうことがある。
「新しい投稿があるかもしれない」
「自分の投稿に『いいね』がついているかもしれない」
そんな期待が、スマホを手に取るきっかけになっているのかもしれない。
では、なぜ私たちは、まだ得られていない反応をこれほど気にしてしまうのだろうか。
実は、この疑問を考えるヒントが、ハトやラットを使った行動心理学の実験にある。
「必ずもらえる報酬」より「たまにもらえる報酬」が人を引きつける
『すべて本能のせい』では下記のように解説されている。
毎回必ず餌が出る条件よりも、ときどきしか出ない条件の方が、執拗にボタンを押し続けることが分かっています。
報酬が「いつもらえるか分からない」状態では、人も動物もその行動を繰り返しやすくなるのです。
スロットマシンが依存性を持ちやすいのも、同じ原理です。
SNSの「いいね」は、この仕組みによく似ています。投稿するたびに反応は違う。たくさんもらえる日もあれば、ほとんどもらえない日もある。
この不確実性が、人の注意や期待を引きつけ続けます。
SNSがやめにくいのも、こうした報酬学習の仕組みが関係していると考えられています。
「やめられない」と感じるのは意志の弱さだけではなく、脳の報酬系が働いた結果でもあるのです。
「次こそは」という期待が、行動を繰り返させる
この実験で興味深いのは、報酬が必ず得られる場合よりも、ときどきしか得られない場合のほうが、行動が続きやすくなるという点だ。
普通に考えれば、ボタンを押すたびに餌が出てくるほうが、動物にとっては好ましいように思える。
しかし、いつ餌が出てくるかわからない状況では、報酬が得られなかったあとも行動を繰り返しやすくなることがある。
「次はもらえるかもしれない」
そんな期待が、行動を続けるきっかけになるのだ。
SNSの「いいね」も、これと似た特徴を持っている。
投稿するたびに必ず同じ数の「いいね」がつくわけではない。
たくさんの反応がある日もあれば、ほとんど反応がない日もある。
だからこそ、「次はどれくらい反応があるだろうか」と気になり、何度も確認してしまうことがある。
つまり、私たちの行動を繰り返させるのは、実際に得られた報酬だけではない。
「報酬が得られるかもしれない」という期待そのものが、行動を繰り返すきっかけになることがあるのだ。
SNSをやめられないのは、意志の問題だけではない
もちろん、SNSを何度も開いてしまう理由は人によって異なる。
友人との連絡や仕事、情報収集など、必要があって利用している場合もあるだろう。
ただ、特に目的がないのに何度もSNSを確認してしまうときには、こうした脳の報酬学習の仕組みが関係している可能性がある。
もしSNSを見る時間を減らしたいと思っているなら、まずは自分がどんなときにアプリを開いているのか、振り返ってみるのも一つの方法だ。
何かを調べるためなのか。
それとも、新しい投稿や「いいね」など、まだ得られていない反応を期待しているのか。
その違いに気づくだけでも、自分がSNSを繰り返し確認してしまう理由を理解する手がかりになるかもしれない。
SNSがやめられないと感じたときには、単に自分の意志の問題として捉えるのではなく、こうした脳の仕組みを知ることも大切なのだ。



