仕事で成果を上げ、収入が増え、欲しかったものも手に入れた。それなのに、なぜか人生に満足できない。そんな状態が年齢を重ねても続くとしたら、何が原因なのだろうか。人生の満足感を考えるうえで知っておきたい、脳の意外な仕組みを『すべて本能のせい』から紹介する。(ダイヤモンド社書籍編集局)
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年をとっても「人生に満足できない」のはなぜ?
若い頃は、仕事で成果を出したい、もっと収入を増やしたい、周囲から認められたいと考えることも多いだろう。
そして、努力を重ね、目標を一つずつ達成していく。
しかし、ある程度の成果を手に入れても、なぜか満足できないことがある。
自分より出世している同僚。
もっと高い収入を得ている友人。
自分以上に充実した生活を送っているように見える知人。
そうした人たちの存在を知ると、今度は自分に足りないものが気になってしまう。
もちろん、他人を目標にして努力することは悪いことではない。
ただ、いつまでも誰かと比べ続けていたら、どうなるだろうか。
一つの目標を達成しても、また次の目標が現れる。
誰かに勝ったと思っても、さらに上にいる人が気になる。
そんな状態が続けば、どれだけ成果を上げても、満足することが難しくなるかもしれない。
実は、人間が他人と競い続けてしまう背景には、脳の報酬の仕組みが関係しているという。
人間の脳は「他人に勝つこと」を報酬として感じる
『すべて本能のせい』では下記のように説明されている。
周りより自分が優位に立ったと分かった瞬間、脳の「側坐核」を中心とした報酬系が活発になり、強い快感ややる気が湧き起こります。
また、競争場面での優位性や地位に関わる「テストステロン」というホルモン値が、競争に勝ったり優位に立ったりすることで上昇します。
それがさらに「次の競争に勝ちたい」という行動を駆り立てるという、終わりのないフィードバックのループをつくり出してしまうのです。
この周りとの相対評価は、脳の中に組み込まれた「他人と比べてしまう仕組み」から生まれており、他人との比較に関する処理は「前帯状皮質」や「内側前頭前野」で行われています。
さらに、自分が周りより劣っていると感じた場合には、不安や恐怖を司る「扁桃体」や、不快感を処理する「島皮質」が働きストレス反応や悔しい気持ちなどが引き起こされます。
「人生に満足できない人」が手放せないもの
ここで注目したいのは、「他人に勝つことがさらなる競争への意欲を生み出す」という点だ。
たとえば、仕事で昇進したとする。
それまでは昇進することが目標だったのに、いざ達成すると、今度は自分より上の役職にいる人が気になり始める。
あるいは、収入が増えたことを喜んでいたはずなのに、もっと稼いでいる人の存在を知ると、急に自分の収入が物足りなく感じられることもあるかもしれない。
つまり、他人との比較を基準にしていると、一つの目標を達成しても、そこで満足できるとは限らないのだ。
しかも、自分が周囲より劣っていると感じたときには、不安や悔しさが生まれることもある。
勝ったときには喜びを感じる一方で、負けたと感じればストレスを抱える。
そして、勝ったとしても、また次の競争が始まる。
このような仕組みを考えると、年をとっても人生に満足できない人の特徴として、「他人より上にいるかどうか」を、自分の満足の基準にしてしまうことが挙げられるのではないだろうか。
若い頃は、仕事での昇進や収入を他人と比べていたかもしれない。
年齢を重ねれば、今度は資産や暮らしぶり、家族の状況など、別のものが比較の対象になることもあるだろう。
もちろん、比較する対象は人それぞれだ。
ただ、何を比べるにしても、他人より優位に立つことだけを目標にしていると、いつまでも新しい競争相手が現れてしまう。
他人との比較には、明確な終わりがない。
だからこそ、他人より上にいるかどうかで自分の人生を評価していると、どれだけ多くのものを手に入れても、満足しにくくなってしまうのかもしれない。
これからの人生で、何を「幸せの基準」にするか
では、年齢を重ねても人生に満足できるようにするためには、どうすればいいのだろうか。
一つのヒントは、自分が何かを求めるとき、その理由を考えてみることだ。
本当に自分が望んでいるからなのか。
それとも、誰かに負けたくないからなのか。
たとえば、収入を増やしたいと思う理由が、自分のやりたいことを実現するためなのか、それとも周囲の人より豊かでありたいからなのか。
同じ目標でも、その背景にある動機は異なる。
もちろん、他人と競うことが悪いわけではない。
競争が努力や成長につながることもあるだろう。
しかし、他人との勝ち負けだけで人生の満足度を決めてしまうと、いつまでも「もっと上へ」と追い求め続けることになるかもしれない。
年齢を重ねるにつれて、仕事や収入、社会的な立場など、自分を取り巻く環境は変わっていく。
そのなかで、他人との比較だけにとらわれず、自分が何に喜びを感じ、どのような人生を送りたいのかを考えることは、大切なのではないだろうか。
「他人より幸せかどうか」ではなく、「自分は今の人生に満足しているかどうか」。
そんな視点を持つことが、終わりのない競争から少し距離を置き、自分なりの幸せを考えるきっかけになるのかもしれない。



