見た目も性格も好みなのに、なぜか恋愛感情が湧かない。反対に、特別に好みのタイプというわけではないのに、なぜか惹かれてしまう。そんな経験はないだろうか。人を好きになる理由は、見た目や性格、価値観だけでは説明できないことがある。私たちは、どのような相手に魅力を感じるのだろうか。恋愛やパートナー選びに関係するかもしれない、生命科学の興味深い研究を『すべて本能のせい』から紹介する。(ダイヤモンド社書籍編集局)

顔に手を当てている女性Photo: Adobe Stock

「見た目も性格も好み」なのに、好きになれないのはなぜ?

恋愛相手に求める条件は、人によってさまざまだ。

見た目が好みであること。
性格が合うこと。
価値観が似ていること。
一緒にいて楽しいこと。

そうした条件が揃っていれば、自然と相手を好きになるようにも思える。

しかし、実際にはそう単純ではない。
周囲から「お似合いだね」と言われる相手でも、なぜか恋愛感情が湧かないことがある。

一方で、これまで自分が好きになってきたタイプとは違うのに、不思議と惹かれてしまう人もいる。

人を好きになる理由を、言葉で説明するのは難しい。
もちろん、恋愛感情には、それまでの経験や相手との関係性など、さまざまな要因が関わっている。

ただ、私たちが相手に魅力を感じる背景には、自分でも意識していない生物学的な仕組みが関係している可能性があるという。
その一つとして研究されているのが、意外にも「体臭」だ。

「好きな人」を選ぶとき、遺伝子が関係している?

『すべて本能のせい』では匂いに関するこんな研究が紹介されている。

人間は相手の体臭からも、無意識のうちに重要な生物学的な情報を読み取っている可能性が研究されています。
特に、免疫系に関わる遺伝子の集まりである「MHC(主要組織適合遺伝子複合体)」の型が自分と異なる相手の体臭を、より好ましいと感じやすい傾向が報告されているのです。
有名な実験では、男性が数日間着用したTシャツの匂いを女性に嗅いでもらったところ、自分とMHC型が異なる男性のTシャツを好ましいと評価する傾向が見られました。
MHC型が違う相手との間に生まれた子どもは、より多様な免疫応答を持つ可能性があるため、この反応には進化的な利益があるのかもしれません。
ただし、その後の研究では必ずしも一貫した結果が得られておらず、実際の人間関係では文化や環境、性格の相性など他の要因も大きく影響するとされています。
そのため、遺伝的な相性がどの程度パートナーを選ぶことに影響しているのかについては、現在も議論が続いています。
それでも、この研究は私たちが思っている以上に、生物としての仕組みがパートナーを選ぶことに影響している可能性があることを教えてくれているのです。

人を好きになる理由は、思っている以上に複雑

恋愛相手を選ぶとき、私たちは見た目や性格、価値観など、さまざまなことを考える。

しかし、実際に誰かに惹かれるかどうかは、そうした条件だけで決まるものではない。

一緒に過ごした時間や経験、相手との関係性、そして自分でも気づいていない感覚など、多くの要因が重なっているのだろう。

今回の研究は、その一つとして、体臭と免疫に関わる遺伝子の違いが関係している可能性を示している。
もちろん、遺伝子だけで恋愛の相性が決まるわけではないし、匂いの好みだけで理想のパートナーを見つけられるわけでもない。

ただ、「なぜか惹かれる」「条件は合っているのに好きになれない」という感覚の背景には、まだ十分に解明されていない身体の働きも関わっているのかもしれない。

人を好きになる理由は、私たちが思っている以上に複雑だ。
そして、その複雑さの中には、生命科学の視点から考えることで初めて見えてくるものもあるのだ。