ADHD当事者のなちゅ。さんが、試行錯誤の末にたどり着いた「生きるコツ」を詰め込んだ『ADHDの母が伝えたい 生きづらい女の子が覚えておきたいこと』。同書に深く共感したという「精神科医さわ」氏(『「発達ユニークな子」が思っていること』著者)は、日々の診療で多くの子どもや親と向き合うかたわら、自身も発達特性のある娘たちを育ててきた。発達特性のある子の中には、周りに合わせて「普通」に振る舞うことで自分を守ろうとする子がいる。親の前でさえ「擬態」しようとする子に、親は何ができるのか、さわ氏に聞いた。(構成/藤田美菜子、ダイヤモンド社書籍編集局)
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女の子は「外で頑張れてしまう」
――『生きづらい女の子が覚えておきたいこと』では、女の子ならではの悩みが多く取り上げられています。さわ先生のクリニックに来る女の子たちに共通する悩みで、親として特に注意して見てあげたほうがいいものはありますか。
精神科医さわ(以下、さわ) 発達障害の特性がある女の子は、「普通の人」っぽく振る舞う、いわゆるカモフラージュが男の子よりも得意だったりします。
統計的には発達障害は男の子のほうが多いとされていますが、それは女の子のほうが周りの空気を読んだり、合わせたりしやすいために「発見されにくい」ことも関係していると思います。また、女の子の場合は多動よりも不注意のほうが目立つこともあって、どうしてもわかりづらいところがありますね。
外では頑張れてしまうから、困っていないように見える。でも家ではめちゃくちゃしんどそうだし、すごく疲れて帰ってくる。そこまで頑張らせないといけないのかな?というパターンは、男の子よりも女の子のほうが多いんじゃないかと思います。
親の中に「◯◯して当たり前」という常識が存在する
――『生きづらい女の子~』では、著者のなちゅ。さんがカモフラージュを「擬態」という言葉で表現し、やりすぎると心が追い込まれてしまうと繰り返し警鐘を鳴らしています。
さわ 私のクリニックの患者さんにも、そういう女の子はたくさんいます。私からすると、そんなに頑張らなくてもいいじゃん、学校なんて命をかけてまで行くところじゃないよ、と思うのですが、本人たちは「そんなに社会は甘くないんだよ、先生」なんて言うのです。「親だってそんな考えは受け入れてくれないよ」と。
――親に対しても擬態して、「いい子」になってしまっているということですね。そうならないためにはどうすればよいでしょうか。
さわ まず、親の中に「学校は行って当たり前」「女の子だから清潔にして当たり前」といった常識や価値観がある場合、親がその価値観で生きてきたこと自体を否定する必要はありません。でも、親の価値観や常識を、そのまま子どもに当てはめる必要もない。そこを手放せないと、親子ともにすごく苦しくなってしまうと思います。
そこがクリアになっている場合に、私がよくお伝えしているのは、「何か困っていることある?」「ママに何かしてあげられることある?」と聞くようにする、ということです。子どもがしんどそうなときはもちろん、しんどそうでなくても、毎日とまではいかないけれど、かなりの頻度で私は子どもに聞いています。学校に行っていない子にも、行っている子にも。
この前も次女が「算数が難しくて学校に行きたくない」と言ってきたんです。そこで「ママがしてあげられることある? 助けたいんだけど」と聞くと、「自分で先生に言ってみる」というときもあれば、「ママから先生に1回メールしといて」と頼んでくるときもある。そのときどきで、子どもも自分で考えて答えてくれるんです。そういう声かけはすごく大事だと思っています。
「カウンセリングは心のジム」
さわ 少し話は変わりますが、なちゅ。さんの本にあった「カウンセリングは心のジム」という話は、すごくいいなと思いました。
カウンセリングは「病んでから行く場所」というイメージがあるかもしれないけれど、そうじゃない。もっと気軽に利用していい、心のスポーツジムなんだよ、という話ですね。
「どうなったら精神科に行っていいんですか」とよく聞かれるのですが、私の答えは「ちょっとでも行きたいと思ったら来てください」です。薬が必要かもしれないと思っている人に「必要ないですよ」と伝えることもできるし、「薬までは必要ないけど、カウンセリングには通ってもらうといいかもしれない」と提案することもできる。
ただ、これを言うと「税金の無駄遣いだ」「金儲けか」と言ってくる人が一定数いるのが困ったところですが……。
カウンセリングは、心がしんどいときにどう対処すればいいかを学ぶ場所です。自分と向き合う時間は誰にとってもプラスになるはず。風邪をひいたら内科に行き、骨折したら整形外科に行くように、同じようにメンタルクリニックも頼ってほしいと思います。
児童精神科医、精神保健指定医、精神科専門医、公認心理師、医療法人霜月之会理事長
精神科の勤務医として、アルコール依存症をはじめ多くの患者と向き合う。シングルマザーとして2人の発達ユニークな娘を育てている。長女が不登校となり、発達障害と診断されたことで「自分と同じような子どもの発達特性や不登校に悩む親御さんの支えになりたい」と勤務していた精神病院を辞め、名古屋市に「塩釜口こころクリニック」を開業。老若男女、さまざまな年代の患者さんが訪れる。これまで延べ5万人以上の診察に携わっている。









