「今年こそは勉強を続けようと思ったのに、三日坊主で終わってしまった」。そんな経験はないでしょうか。新しいことを始めたときはやる気に満ちていても、思うように成果が出なかったり、周囲と比べて焦ったりすると、次第に続けるのがつらくなるものです。一方で、何年にもわたって努力を積み重ねられる人もいます。では、「継続できる人」は、どんなことをしているのでしょうか。東大卒業後、日本マクドナルドCMO、Facebook Japan初代社長などを歴任。51歳から司法試験に挑戦し、57歳で合格した岩下充志氏の著書『夢をかなえる 勉強の地図』から、そのヒントを紹介します。

「継続できる人」が無意識にやっている、たった1つのことPhoto: Adobe Stock

今日も明日も勉強が続く「メンタル管理術」

私は5年間、一人で司法試験の勉強を続けていました。その最中も、合格してからも、よく「どうしてそんなに継続できるのか?」と尋ねられました。プロセス指標を使った進捗管理やQAノート勉強法での効率的な学習などさまざまな要因があったと思いますが、私がここまで継続できた最大の理由は、「あまり考えなかったから」だと思っています。

どんなにメンタルがタフな人でも、常に冷静沈着な人でも、勉強していると心が折れそうになったり、ネガティブな感情に飲み込まれたりすることはあるでしょう。

とくにその原因となりやすいのが、他者との比較です。

「あの人はこんなに長く勉強している」
「あの人は今回の模試でも合格判定だった」
「あの人はたった1年で合格している」

勉強は、勉強時間や点数、合否など優劣が可視化される指標がたくさんありますから、否が応でも他人と自分を天秤にかけてしまうものです。
私自身もそうでした。自宅で一人で勉強していたので、共に司法試験に挑む人と比べる機会は少なかったのですが、勉強などせず働いている友人と比較してしまうことがありました。
大学時代の同級生や過去に勤めた会社の同期、身の回りの友人たちは、社会の第一線で活躍し、多額の報酬を得ている人が多かったです。

ですから、「3年も4年も金にならない勉強をして、自分は何をしているんだろう」という思いは常にありましたし、「受からなかったらどうしよう」「これまでの数年間の努力がすべて無駄になってしまったら……」というプレッシャーも大きかったです。

しかし、そうした問いをどれだけ考えても、解決策は存在しません。今すぐ受かる方法もないし、絶対に受かる保証もない。そして、他人の人生を一切目に入れないこともできません。

だから、私は極力「考えないように」していました。不安には目をつぶってやりすごし、疑問が頭に浮かべば意識して思考からシャットアウトしたのです。

「勉強する」ことだけが前進の役に立つ

一見、「逃げ」の選択に思えるかもしれません。
ですが、勉強においては、考えないことこそ最も合理的な選択だと思ったのです。なぜなら、私の目的である「法曹になる」ことを考えれば、「勉強する」ことだけが前進できる手段だから。不安や悩みに真正面から向き合ったところで、私の合格への歩みが前に進むことはありません。

とにかく「考える暇があったら勉強しよう」「悩むくらいなら、参考書を読もう」と不安を振り切って、無我夢中でルーティンに向かっていました。

この「考えないようにする」というマインドセットを手助けしてくれたのが、明治の歌人・石川啄木の短歌でした。

「友がみなわれよりえらく見ゆる日よ 花を買ひ来て 妻としたしむ」

寝る前、ベッドの中で暗闇を見ながら不安に襲われるとき、この歌が頭に浮かんだのです。あの石川啄木でさえ自分と同じように悩んでいたんだと思いました。同時に、周りに惑わされず、目の前の日常を大切にしよう。自分の生活にすでにある喜びや慰めに目を向けよう。そう思えたのです。

みなさんも勉強に真剣に取り組めば取り組むほど、さまざまなことで気持ちが塞ぎ込んでしまうことがあるでしょう。
なかなか成績が伸びないとき、SNSで他人の素晴らしい進捗が目に入ったとき、自分より後から勉強を始めた人が先に合格したとき……。

そんな焦りや不安に私からアドバイスを送れるとしたら、「自分が何を目指しているのかを見失わないでほしい」ということです。

勉強時間や点数で比較して、他人に勝つことが目的ではないはず。本来の目標は、あなた自身が合格を勝ち取ることです。だったら、他人に目を向けるより、自分自身にフォーカスすべきです。他人の点数や合否など、自分ではどうにもならない外部要因について考えている暇はありません。とにかく勉強する。手を動かし、頭を働かせる。そのほうが、真の目標に近づけることは明白な事実です。私たちはつい「ネガティブなマインドに打ち勝たなければ」と思いがちですが、無理に乗り越えようとしなくていいと思います。

負の感情に真正面から立ち向かって心をすり減らすくらいなら、あえて背を向け、目を逸らす。それもまた、限られたエネルギーを勉強に注ぎ込むための、極めて戦略的なメンタルコントロール術ではないでしょうか。