ノーベル賞の登竜門・ラスカー賞受賞で話題! 睡眠学の世界的権威・柳沢正史教授が、最新研究をもとにやさしく解説した著書『世界最高の睡眠学が教える 睡眠の正解』が話題です。巷にあふれる睡眠の常識・思い込みの真偽を解き明かしつつ、「眠れない」「起きられない」「寝ても疲れがとれない」といった悩みの解消法を提唱します。あなたが本来の自分を取り戻し、よりよい明日を迎える睡眠のヒントをお届けします。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局・中村直子)
Photo: Adobe Stock
世界的企業のCEOの朝は早いが、夜も早い!?
「AppleのCEOティム・クックは、毎朝3時45分に起きている」
日本のビジネス雑誌やウェブメディアを見ていると、「世界的経営者は、みんな早起きをしている」といった切り口の記事が定期的に出ます。
「あの世界的なCEOがそこまでやっているなら、自分も明日から早起きしよう」「朝活で人生を変えた経営者がいるのだから、自分も真似してみよう」
そんな記事を読んだ瞬間、背筋が伸びる思いをした方も多いのではないでしょうか。すばらしい志ですが、ここに大きな落とし穴があります。
翻訳の途中で、もっとも大事な部分が消えている
こうした記事の元ネタは、たいていの場合、欧米のメディアです。ところが、翻訳されて日本に届く過程で、もっとも大切な情報が抜け落ちてしまうのです。欧米の記事は、たいていこんな見出しで書かれています。
「ティム・クックは、毎日何時間眠っているのか」「世界の名だたるCEOたちの、驚くべき睡眠時間」
切り口が、起床時刻ではなく睡眠時間の長さなのです。ところが、これが日本のメディアを経由するころには、こう変わってしまいます。
「世界のCEOは、みな早起き」「成功者の朝は、こうして始まる」
起床時刻だけが切り取られ、肝心の睡眠時間や就寝時刻は、すっぽりと抜け落ちてしまっている。これは致命的な情報の欠落です。
CEOは7~8時間眠っていた!
ここで、当たり前すぎるけれど大切な事実をお伝えします。
朝3時45分に起きるティム・クックは、深夜まで起きているわけではありません。彼は夜9時前後には就寝しているとされています。おおむね7時間の睡眠時間をしっかり確保しているのです。
ウォルト・ディズニー・カンパニーCEOのボブ・アイガーは、朝4時半起きで知られていますが、彼もまた、夜は早く床につきます。
Amazonの創業者ジェフ・ベゾスはインタビューで「私は8時間眠ることを優先する」と明言しています。それが、世界一ともいわれた経営判断の質を支えていたと、本人が語っているのです。
多くの世界的なCEOの朝は、たしかに早い。しかし、彼らの夜も、同じくらい早い。そして、そのあいだにきちんと7~8時間の睡眠を確保している。これが、世界のトップ経営者たちの実像です。
CEOに学ぶなら、起きる時間だけ真似してはいけない
日本に届く記事から“夜の早さ”と“睡眠時間”が消えると、読者は何を真似しようとするでしょうか。
それは起床時刻だけです。夜はいままでどおり、深夜0時、1時まで起きている。仕事を持ち帰り、SNSを眺め、動画を観て、それから眠りにつく。そして、朝だけ世界的CEOを真似て5時に起きる。
もうおわかりですね、それではただの睡眠不足です。世界的CEOの圧倒的なパフォーマンスに近づくどころか、どんどん遠ざかってしまいます。
もしあなたが、世界的CEOの生活習慣から学びたいと思うなら、真似すべきは起床時刻ではありません。彼らがどれだけの睡眠時間を確保しているか。何時に寝ているのか。彼らが、自分の体質に合わせて、いかに合理的にスケジュールを組み立てているか。ぜひとも、そこを真似てください








