ノーベル賞の登竜門・ラスカー賞受賞で話題! 睡眠学の世界的権威・柳沢正史教授が、最新研究をもとにやさしく解説した著書『世界最高の睡眠学が教える 睡眠の正解』が話題です。巷にあふれる睡眠の常識・思い込みの真偽を解き明かしつつ、「眠れない」「起きられない」「寝ても疲れがとれない」といった悩みの解消法を提唱します。あなたが本来の自分を取り戻し、よりよい明日を迎える睡眠のヒントをお届けします。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局・中村直子)

なぜエジソンは金属の球を握って眠ったのか? 睡眠学者・柳沢正史が明かす、数々のアイデアを生んだ眠り方Photo: Adobe Stock

エジソンの発明は、まどろみのなかで生まれた!?

 眠りとひらめきの興味深い関係を紹介しましょう。

 完全に眠ってはおらず、かといって起きてもいない、うとうとしている曖昧な状態。一般的にはまどろみ、睡眠学的には“N1”と呼ばれるもっとも浅い眠りの段階です。

 近年の研究で、このまどろみの時間にこそ、ひらめきが起こりやすいことがわかってきました。簡単にいうと、意識のブレーキがほどけて、ふだんは結びつかない情報同士が、脳のなかで勝手につながりはじめるのです。

 この現象を経験的に知ってか、自分の仕事に積極的に活用していたのが、発明王トーマス・エジソンです。

 彼は椅子に座り、手に金属の球を握ったままでまどろむ習慣があったそうです。

 徐々に寝入って体の力が抜けると、握っていた球が、ガシャンと音を立てて床に落ちる。その音でハッと目を覚ます。まどろみのあいだに脳をよぎった最高のひらめきを、深く眠って忘れてしまう前にメモしておく。

 もしエジソンがこのわずかなまどろみの時間を大切にしていなかったら、白熱電球も蓄音機もこの世に生まれず、ひょっとすると、私たちの現代の生活はいまとは少し違った姿になっていたかもしれません。

ひらめきは、寝ているあいだに作られる

 ひらめきは、特別な職業の人だけに必要なものではありません。仕事にも、勉強にも、家庭にも、人生のあらゆる場面に必要です。

 締め切り前のクリエイター、論文の方向性が見えない研究者、企画に煮詰まったプランナー、商談の突破口を探している営業職、部下への伝え方に悩むマネージャー、新規事業に悩む経営者、受験勉強で壁にぶつかった学生、子どもにどう声をかけるか迷う親……。

 ひらめきが欲しい人ほど、徹夜をしてはいけません。

 徹夜でフラフラになりながらのブレインストーミングなど、非効率の極みです。本人は限界まで考え抜いているつもりでも、たいしたアイデアは出てきません。実際、翌朝になって見返してみると「なぜこんなものに興奮していたのか」と頭を抱えた経験は、誰にでもあるはずです。

 どれだけ考えても答えが出ない。そんな夜にいちばん効くのは、机に向かって粘りつづけることではありません。いったん考えるのをやめて、寝てしまうことです。

 ひらめきは、起きているときに、気合いでひねりだすものではありません。眠っている脳が用意してくれた答えに、翌朝、気づく。そういう形でやってくることが、とても多いのです。

 あなたが眠っている無意識のあいだにこそ、脳は一生懸命アイデアをひねりだしてくれる。私たちが眠っているうちに、脳は裏側で、情報の整理と組み立てを進めてくれているのです。