新しい趣味を見つけた夜、勢いで道具を一式そろえ、「明日から毎日続ける」と心に決める。ところが数週間後には、その道具が部屋の隅でほこりをかぶっている――。そんな経験はないだろうか。熱意があったはずなのに、なぜ長続きしないのか。その原因は、気持ちが高まったときの「決め方」にあるのかもしれない。書籍『小さな実験』をもとに解説する。

熱意が、決意を膨らませる
語学を始めようと思い立ち、一年分のオンライン講座を申し込む。ランニングに目覚め、高価なシューズと時計を買い、来年のフルマラソンにエントリーする。読書習慣をつけようと、まとめて10冊を注文する。
何かに心を惹かれた瞬間、私たちはつい大きく構えたくなる。せっかくやるなら本格的に、どうせなら徹底的に。その瞬間は、どこまでもやれそうな気がしているからだ。
(『予想だにしないほど人生が大きく動き出す 小さな実験』より)
ここでいう「最大化志向脳」とは、気持ちが盛り上がったときに、できるだけ多く、できるだけ大きく望んでしまう頭の働きだと言い換えられるだろう。意欲の表れではあるが、そのまま従うと、思わぬ落とし穴にはまる。
高揚した自分は、未来の自分を見誤る
気持ちが高まっているとき、私たちは「今の熱量がずっと続く」という前提で物事を決めてしまう。けれど、実際に続けるのは、仕事で疲れた夜の自分や、気が乗らない雨の日の自分だ。
熱が少し冷めたとき、高揚した自分が立てた誓いは、急に重たいものに変わる。毎日1時間と決めたのに30分しかできない日が続くと、「約束を守れなかった」という感覚が積み重なっていく。やがて、続けること自体が苦痛になり、すべてを投げ出してしまう。そして「自分は飽きっぽい」と結論づけ、次に何かを始めることにも慎重になる。
本当は、興味が失われたわけではない。最初の約束が、普段の自分には大きすぎただけなのだ。
「物足りない」くらいで決めておく
では、どうすればいいのか。ひとつの方法は、気分が乗っているときこそ、あえて控えめに決めることだ。
「毎日1時間」と言いたくなったら、「週に3回、15分」にしてみる。一年分の講座を申し込みたくなったら、まずは1カ月だけにする。道具は、最低限のものから始める。自分の感覚では少し物足りないくらいがちょうどいい。
物足りなさを残しておくと、「もう少しやりたい」という気持ちが次の日まで持ち越される。その気持ちが、続ける力になる。続けられたら、そのときに少しずつ広げていけばいい。最初から最大の約束をするのではなく、手応えに合わせて育てていくのである。
好奇心は、大きな誓いで縛りつけるより、ゆとりを持たせたほうが長く燃え続ける。
興味を長く持ち続けるために必要なのは、勢いに任せて大きな誓いを立てることではない。もう少しやりたいと思えるところで、いったん手を止めておくことだけでいい。




