「5年後、どうなっていたいですか」。面談や面接でそう聞かれて、言葉に詰まったことはないだろうか。目標を持つべきだとはわかっている。けれど、何を目指せばいいのかがわからない。そして、目標がないことに焦り、ますます動けなくなる。その行き詰まりの原因は、意欲の低さではないのかもしれない。書籍『小さな実験』をもとに解説する。

最近では多くの人が、次に何をすればいいのかわからず、立ちすくんでしまう感覚を抱いている。
本来なら原動力になるはずの
「明確な目標を立てる」という
考えが、かえって身動きを取れなくさせているのだ。

目標が立てられないことに、悩んでしまう

キャリアの手本とされてきた道筋は、以前ほど確かなものではなくなった。業界の勢力図は数年で塗り替わり、昨日まで求められていたスキルが、明日も通用するとはかぎらない。

そんな中で「長期的なゴールを定め、そこから逆算して計画を立てよう」と言われても、戸惑うのは当然だ。何を目指せばいいのかを決められず、決められない自分を責め、結局その場から動けなくなってしまう。

最近では多くの人が、次に何をすればいいのかわからず、立ちすくんでしまう感覚を抱いている。
本来なら原動力になるはずの「明確な目標を立てる」という考えが、かえって身動きを取れなくさせているのだ。
未来が不確かな時代には、厳格な目標設定の枠組みが用意する整然とした条件は、ほとんど役に立たない。まるで狙う的もないのにダーツを投げるようなものだ。

(『予想だにしないほど人生が大きく動き出す 小さな実験』より)

目標設定の手法は、先の見通しがある程度立つことを前提にしている。前提そのものが揺らいでいるとき、その手法にこだわるほど、かえって足がすくんでしまう。

「決めてから動く」の順番が、人を止める

多くの人は、まず目指す場所を決め、それから動き出すものだと考えている。だから、行き先が決まらないうちは、一歩も踏み出してはいけないような気がしてしまう。

だが、自分が何に向いているのか、何に心を動かされるのかは、頭で考えるだけではなかなかわからない。実際に手を動かし、誰かと関わり、何かを経験してはじめて見えてくるものだ。動かずに答えを探そうとするほど、答えは遠ざかっていく。

的ではなく、方角を決める

では、どうすればいいのか。ひとつの方法は、遠くの的を定める代わりに、進む方角だけを決めることだ。

「この分野で第一人者になる」と決めるのではなく、「最近、人に教えることが楽しい」「数字を扱う仕事に興味がある」といった、いまの自分が惹かれる方向に目を向ける。そして、その方向に沿って、数週間から数カ月で試せることをやってみる。社内の勉強会で話してみる、関心のある分野の人に話を聞きに行く、週末に小さな副次的プロジェクトを始めてみる。

やってみて手応えがあれば、その方向にもう少し進めばいい。違和感があれば、少し向きを変えればいい。的が定まっていなくても、方角があれば人は動ける。そして動き続けるうちに、自分が目指したい場所の輪郭が、あとから浮かび上がってくる。

先の見えない時代に前へ進むために必要なのは、完璧な目標を描くことではない。いま心が向いている方角に、ためしに足を向けてみることだけでいい。