新しい企画に手を挙げたいけれど、まだ知識が足りない。転職を考えているけれど、もう少しスキルを磨いてから。そう思って本を読み、セミナーに通い、学びを重ねる。それなのに、いつまでたっても「準備ができた」とは感じられない。その足踏みの原因は、能力の不足ではないのかもしれない。書籍『小さな実験』をもとに解説する。

スキルが足りないと思っていても、実際には自信が足りないだけ、ということもある。本を読んだり、ポッドキャストを聴いたりしても、それを実際の仕事に取り入れなければ意味はない。

学べば学ぶほど、踏み出せなくなる

ビジネス書を読み、話題の講座を受け、移動時間には音声コンテンツを聞く。ノートには学んだことがびっしり書き込まれている。それでも、いざ実践しようとすると「まだ自分には早い」とためらってしまう。

知れば知るほど、上には上がいることが見えてくる。専門家の話を聞くたびに、自分との差を思い知らされる。こうして、学びが自信につながるどころか、かえって腰を重くしていく。

スキルが足りないと思っていても、実際には自信が足りないだけ、ということもある。本を読んだり、ポッドキャストを聴いたりしても、それを実際の仕事に取り入れなければ意味はない。
(『予想だにしないほど人生が大きく動き出す 小さな実験』より)

「まだ能力が足りない」という感覚は、多くの場合、実際の力量を正確に測った結果ではない。試したことがないから、できるかどうかわからない。その不安を、私たちは「スキル不足」と呼んでいるだけなのかもしれない。

自信は、知識の量からは生まれない

知識を増やせば自信がつく、と考えるのは自然なことだ。けれど実際には、どれだけ頭に詰め込んでも、使ったことのない知識は確かな手応えにならない。泳ぎ方の本を何冊読んでも、水に入らなければ泳げるようにはならないのと同じである。

自信を育てるのは、「やってみたら、意外とできた」という経験だ。たとえ完璧でなくても、実際に試して何らかの結果が出たとき、人ははじめて「自分にもできる」と感じられる。逆に言えば、試す機会を先送りにしているかぎり、いくら学んでも自信は追いついてこない。

学んだら、ひとつだけ使ってみる

では、どうすればいいのか。ひとつの方法は、何かを学んだら、その中から一つだけ選んで、すぐに仕事で使ってみることだ。

会議の進め方についての本を読んだなら、次の打ち合わせで一つだけ取り入れる。プレゼンの講座を受けたなら、来週の報告で一つだけ試してみる。すべてを完璧に実践しようとする必要はない。一つ試せば、うまくいった点と合わなかった点が見えてくる。それが、本で読んだだけでは得られない、自分だけの知恵になる。

学ぶことと使うことの割合を少しだけ変えてみる。新しい本に手を伸ばす前に、すでに知っていることを一つ実践してみる。その積み重ねが、いつのまにか「準備が足りない」という思い込みを溶かしていく。

自信を持って踏み出すために必要なのは、さらに知識を積み上げることではない。すでに学んだことを、一つだけ実際に使ってみることだけでいい。