仕事に家庭に、果たすべき役割はいくつもある。周りに迷惑をかけないよう、任されたことはきちんとやり遂げたい。そうやって責任感を持って走り続けている人ほど、自分の内側で起きている変化に気づきにくい。最近、眠りが浅い。些細なことで声を荒らげてしまう。それは、心からの知らせかもしれない。書籍『小さな実験』をもとに解説する。

「自分のこと」は、いつも後回しになる
締め切りを守る。頼まれたことを引き受ける。家族の予定に合わせて動く。一つひとつは当たり前のことだが、それが積み重なると、自分の状態を気にかける時間はほとんど残らなくなる。
少し疲れていても「このくらいで休むわけにはいかない」と考え、気分が沈んでいても「今は落ち込んでいる場合ではない」と押し込める。責任を大切にする人ほど、自分の感覚を後回しにすることに慣れてしまっている。
なかなか寝つけない、イライラしやすいというのは、合図かもしれない。
(『予想だにしないほど人生が大きく動き出す 小さな実験』より)
感情は、気まぐれに湧いてくる邪魔者ではない。いまの状態に無理がかかっていることを、本人より先に察知して知らせてくれるものでもある。
合図は、小さな変化として現れる
厄介なのは、こうした知らせが目立たない形でやってくることだ。布団に入っても仕事のことが頭を巡る。以前なら笑って流せたことに、つい反応してしまう。好きだったはずの趣味に、手が伸びなくなる。週末になっても疲れが抜けない。
一つひとつは「たまたまだろう」と片づけられる程度のことだ。だからこそ、忙しい人ほど見過ごしてしまう。そして、気づかないまま無理を続けるうちに、合図は少しずつ大きくなっていく。
「いつもの自分」と比べてみる
では、どうすれば合図に気づけるのか。ひとつの方法は、週に一度でいいので、「いつもの自分」と今の自分を比べてみることだ。
寝つきはどうか。人に対して余裕を持てているか。楽しみにしていることはあるか。調子のよいときの自分を基準にして、ずれている点がないかを確かめる。日記やメモに一行書き留めておくと、変化はさらに見えやすくなる。
何か気になる変化が見つかったら、すぐに大きく生活を変える必要はない。予定を一つ減らしてみる、早めに布団に入る日をつくる、信頼できる人に話を聞いてもらう。小さく調整して、様子を見る。それでも状態が続くようなら、専門家に相談することも選択肢に入れておきたい。
自分の状態に気を配ることは、責任から逃げることではない。むしろ、長く役割を果たし続けるための大切な務めなのである。
周りへの責任を果たし続けるために必要なのは、自分の感覚に蓋をすることではない。眠りや気分のちょっとした変化に、目を留めてみることだけでいい。




