「謙虚さこそが、最強の戦略だ」と主張するのは、モルガンスタンレー、Googleなどで働き4大陸50カ国以上のリーダーを見て続けてきたピョートル氏。
しかし、自分は謙虚で控えめという自己認識を持つ人は、本当に謙虚なのか。謙虚さを武器にするうえでの、気をつけたい落とし穴があると語ります。新刊『「謙虚さ」という戦略』から一部抜粋・編集してご紹介します。
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謙虚に見えても、信頼されない人の共通点
謙虚さのコミュニケーションで、最も陥りやすい落とし穴があります。
それは、「相手によって謙虚さを使い分けてしまうこと」です。
上司や取引先、著名な人には丁寧に接する。最後まで話を聞き、笑顔で相槌を打ち、質問もする。しかし、部下や後輩、立場の弱い人に対しては、話を途中で遮ったり、「それは違う」とすぐに結論を出してしまったりする。本人には悪気はありません。しかし、その違いは驚くほど相手に伝わっています。
人への態度の違いは思った以上に見抜かれる
聞く態度は、相手の立場によって無意識に変わることがあります。
相手の立場が違うことで、アイコンタクトの長さ、相槌の頻度、質問の深さなどが無意識に変化するのです。つまり、多くの人は「傾聴ができるかどうか」ではなく、「誰に対して傾聴するか」を無意識に選んでいるのです。部下は、その小さな違いを敏感に感じ取ります。
「上の人には丁寧だけど、自分には雑だなぁ」と。
その瞬間から、信頼は少しずつ失われていきます。
ここでひとつ考えてみてください。
もし、あなたの上司が、社長の前では深くうなずき、最後まで話を聞いているのに、あなたの前ではスマートフォンを見ながら話を聞いていたら、どう感じるでしょうか。
おそらく、「この人は相手によって態度を変える人なんだ」と感じるはずです。
実は、部下もまったく同じことを感じているのです。
態度を変える人は、相手の何を見ているのか?
ここで、ひとつ疑問があります。
謙虚さの落とし穴にハマる人は、本当に「相手の地位」で態度を変えているのでしょうか。
実は、違います。私たちが見ているのは、相手ではありません。
「その人が、自分をどう評価するか」を見ているのです。
上司には評価されたい。
取引先には嫌われたくない。
著名な人には認められたい。
好感を持たれたい人に対しては、自然と丁寧になる。
一方で、自分を評価する立場にない相手に対しては、その緊張感がなくなってしまいます。
つまり、態度の違いは、相手への敬意の差というより、自分への関心の大きさなのです。
自分が思っている以上に、「誰に謙虚であるか」ではなく、「誰に対しては謙虚ではないか」を見られています。
損得勘定抜きの謙虚さを目指す
戦略的謙虚さで重要なのは、「相手の立場によって態度を変えない」ことです。
もちろん、相手の年齢、役職や経験によって接し方、敬語の使い方、言葉の選択は変わります。しかし、相手をひとりの人間として尊重する姿勢まで変わってはいけません。
新入社員の意見にも、CEOの意見にも、同じように耳を傾ける。
清掃スタッフにも、役員にも、同じように敬意を払う。
そこに、その人の本当の人格が表れます。
評価される相手にだけ腰を低くすることは、謙虚でも何でもないのです。
むしろ、自分には何の利益ももたらさない相手にも、変わらぬ敬意を払えることが大事です。
そこには損得勘定がありません。それができるからこそ、人はその姿を見て、「この人は本当に謙虚な人だ」と信頼を寄せるのです。
誰に対しても、変わらない敬意を向けられるか。
このコミュニケーションの一貫性こそが、偽りの謙虚さと本物の謙虚さを分ける分岐点になります。
謙虚なコミュニケーションの基準は、自分がどう見えたかではありません。あなたと話したあと、相手が『ここでは自分の考えを話してもいい』と思えるようになったかです。
連続起業家、投資家、経営コンサルタント、プロノイア・グループ株式会社 代表取締役、株式会社GA technologies 社外取締役
ポーランド生まれ。2000年に来日。モルガン・スタンレーを経て、Googleでアジア太平洋地域の人材開発と組織改革に携わる。2015年にプロノイア・グループを設立し、組織開発と経営者コーチングを行う。講演者としても、国内外の経営層やカンファレンスで基調講演を行っている。2016年に共同創業したモティファイでは人材育成プラットフォーム「Motify」を400社超に導入し、2019年に同事業を譲渡。組織の内側、経営者、取締役会という3つの立場から、日本の組織を見てきた。著書は『世界最高のチーム』『世界最高のコーチ』(ともに朝日新聞出版)、『心理的安全性 最強の教科書』(東洋経済新報社)、『NEW ELITE』(大和書房)など多数。本書が20冊目となる。エンジェル投資家としても活動するほか、東京・永田町のポーランド料理レストラン「Ani Mru Mru」のオーナーを務める。



『「謙虚さ」」という戦略』(ピョートル・フェリクス・グジバチ著)


