「若い頃はあんなに親しくしていたのに、今では連絡先もわからない」「お世話になった人に、結局何も恩返しができなかった」。人生の終盤に差しかかったとき、そんな後悔を抱く人も多い。仕事や家庭に追われるうちに、大切な人とのつながりは少しずつ薄れていく。忙しい人生を送っていても、かつての恩を忘れず、人とのつながりを大切にし続けるには、どうすればいいのだろう。『世界の役員が教えてくれたこと――「仕事に追われる人生」で終わらない生き方』が、その答えを教えてくれる。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)

老後、「間違いなく後悔すること」・ベスト1Photo: Adobe Stock

お世話になった人のことを、忘れていませんか?

「昔、あの人には本当にお世話になったな」
「いつかお礼をしようと思っていたのに、結局できなかった」

あなたにも、そんな経験はないだろうか?

「いつか恩返ししよう」と思っていたのに

私は以前、お世話になった人に対して、「いつか何かの形で恩返しをしたい」と思いながら、何もしないまま時間が過ぎてしまったことがある。

仕事で困っていたときに助けてくれた先輩。転職の相談に乗ってくれた知人。忙しいときに、さりげなく仕事を引き受けてくれた同僚。

そのときは、心から感謝していた。

「この恩は、いつか必ず返そう」
「今度、何かお礼をしよう」

そう考えていたはずなのに、日々の忙しさに追われるうちに、いつの間にか忘れてしまう。

数年後、ふとその人のことを思い出しても、すでに疎遠になっている。連絡先が変わっていたり、どこで何をしているのかわからなくなっていたりする。

「あのとき、ちゃんとお礼をしておけばよかった」

そう思っても、過ぎた時間は戻らない。

30年間、手帳に書き続けていること

『世界の役員が教えてくれたこと』には、こんな役員のエピソードが紹介されている。

私が知っている役員は、手帳の最後のページに「いつか恩を返さなければならない人」のリストを、年単位で書き留めていました。
30年前、入社2年目のときに資料整理を手伝ってくれた先輩の名前。
20年前、子どもが入院したときに見舞いに来てくれた同僚の名前。
15年前、海外赴任の準備で困っていたときに荷物の手配を手伝ってくれた近所の方の名前。
10年前、立ち寄ったカフェで素晴らしい会話を聞かせてくれた経営者の名前。
そこには30人以上の名前が並んでいます。

――『世界の役員が教えてくれたこと「仕事に追われる人生」で終わらない生き方』より

この役員は、30年前に受けた小さな恩さえ、忘れずに手帳に書き留めているという。

しかも、ただ名前を記録しているだけではない。

かつての先輩の子どもが就職活動で困っていると聞けば、紹介できる企業を探す。昔の同僚が起業すると知れば、自分の人脈を使って顧客を紹介する。

恩返しできる機会が訪れたら、すぐに行動する。
それを30年間、当たり前のように続けているのだ。

特別な記憶力は必要ない。
手帳に名前を書き、定期的に見返す。
それだけで、何十年も前に受けた恩を忘れずにいられる。

多くの人が「いつか恩返しをしよう」と思うだけで終わる一方で、この役員は、その「いつか」を忘れないための仕組みをつくっているのである。

老後、「間違いなく後悔すること」・ベスト1

年齢を重ね、人生を振り返ったとき、人は何を後悔するのだろうか。

もっと出世すればよかった。もっとお金を稼げばよかった。そんな後悔もあるかもしれない。

しかし、それ以上に心に残るのは、かつて自分を助けてくれた人たちへの感謝を、十分に伝えられなかったことではないだろうか。

老後、「間違いなく後悔すること」・ベスト1は、「いつか恩返しをしよう」と思いながら、何もしないまま時間を過ごしてしまうことだ。

恩返しは大げさなものである必要はない。

久しぶりに連絡を取る。近況を尋ねる。相手が困っているときに、できる範囲で力になる。
そんな小さな行動でも、感謝の気持ちは伝えられる。

大切なのは、恩を受けたことを忘れず、機会があれば行動に移すことだ。

人生の豊かさは、どれだけ多くのものを手に入れたかではなく、自分を支えてくれた人たちのことを、どれだけ大切にできたかで決まる

そのためにできることを、このエピソードは教えてくれたのだ。