2013年3月、習近平が国家主席に就任した直後、中国国営テレビ(CCTV)は突然、テクノロジー大手アップルに対して猛烈なバッシングを始め、国ぐるみの「アップル叩き」に発展した。その裏には、新政権の政治的企図があったという。新刊『アップル自壊』を基に解説する。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
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「自画自賛の無意味な声明だ」……
突然バッシングされたアップル
一般的に、アップルと中国の関係といえば、「安価で豊富な労働力と広大な工場網を活用して世界一の製造システムを築き上げた」という、理想的なビジネスパートナーシップとして捉えられがちです。
それはある程度事実と言えるでしょう。しかし、それはあくまで表向きだったと思い知らされる事件が起きます。
2013年3月14日、習近平が中国の最高指導者(国家主席)に正式就任しました。そのわずか翌日である3月15日、中国国営テレビ(CCTV)の看板番組「消費者権益保護日」で一斉攻撃のターゲットに選ばれたのが、他ならぬアップルでした。新刊『アップル自壊』にはこのように書かれています。
習近平は間髪を容れず、世界最大のテクノロジー企業に、これまでのようにはいかないぞと思い知らせた。
習が国家主席に就任した翌日の2013年3月15日、中国国営テレビの中国中央電視台(CCTV)が、1991年から続いていて数千万人が視聴する「消費者権益保護日」の番組を放送した。
(中略)
2013年、アップルがターゲットになった。CCTVは、アップルが中国の消費者をぞんざいかつ不公平に扱っていると非難した。外国市場では、iPhoneが故障すると丸々交換したり新品の部品で修理したりするのに、中国の消費者のiPhoneは再生部品で修理されるのだと報じた。
――『アップル自壊』より
習が国家主席に就任した翌日の2013年3月15日、中国国営テレビの中国中央電視台(CCTV)が、1991年から続いていて数千万人が視聴する「消費者権益保護日」の番組を放送した。
(中略)
2013年、アップルがターゲットになった。CCTVは、アップルが中国の消費者をぞんざいかつ不公平に扱っていると非難した。外国市場では、iPhoneが故障すると丸々交換したり新品の部品で修理したりするのに、中国の消費者のiPhoneは再生部品で修理されるのだと報じた。
――『アップル自壊』より
その後、アップル経営陣はどのように反応したのでしょうか。『アップル自壊』は続けます。
アップルは、どの企業でも取るであろう対応を取った。相手の主張を冷静に否定し、中国での保証規定は「アメリカを含む全世界とほぼ同じである」と明言した。さらに良かれと、「我が社は比類なきユーザーエクスペリエンス」を提供していると付け加えた。
これが大誤算だった。アップルはすぐさまネット上で集中砲火を浴び、中国国営メディアが何週間にもわたって組織的に攻撃を加えた。
(中略)
中国政府の機関紙『人民日報』は第1面の社説の中で、「自画自賛の無意味な声明だ」と罵った。朝、目覚めて新聞を広げた中国の何千万人もの購読者は、「アップルの比類なき傲慢さを打ち負かす」という大見出しを目にした。
これが大誤算だった。アップルはすぐさまネット上で集中砲火を浴び、中国国営メディアが何週間にもわたって組織的に攻撃を加えた。
(中略)
中国政府の機関紙『人民日報』は第1面の社説の中で、「自画自賛の無意味な声明だ」と罵った。朝、目覚めて新聞を広げた中国の何千万人もの購読者は、「アップルの比類なき傲慢さを打ち負かす」という大見出しを目にした。
「多国籍企業にとっての安息の地」は終わった
国営メディアによる集中攻撃を受け、CEOのティム・クックは、中国語による前代未聞の謝罪文を発表し、アメリカ国内を上回る手厚い保証規定への改定を余儀なくされました。
CCTVの番組から18日後、クックは直々に謝罪文を書き、それを中国語に翻訳して中国の自社ウェブサイトに掲載した。「心からのお詫び」を示し、……アメリカの顧客を上回る新たな交換規定を公表した。(注1)
(中略)
経営陣は、……「中国政府に対してどんな戦略を取るべきか」といった基本的な問題に対して自分たちが答えを持ち合わせていないことを、突如として思い知ったのだ。
それまで長年にわたりアップルは、労働問題やサプライチェーンの問題に関する地方政府への対応を、台湾の大手メーカー、フォックスコンを始めとした各提携企業に任せきっていた。アップルには一貫した幅広い戦略が欠けていた。
――『アップル自壊』より
(中略)
経営陣は、……「中国政府に対してどんな戦略を取るべきか」といった基本的な問題に対して自分たちが答えを持ち合わせていないことを、突如として思い知ったのだ。
それまで長年にわたりアップルは、労働問題やサプライチェーンの問題に関する地方政府への対応を、台湾の大手メーカー、フォックスコンを始めとした各提携企業に任せきっていた。アップルには一貫した幅広い戦略が欠けていた。
――『アップル自壊』より
突然中国がこのような行動をとった背景には、中国共産党の強硬姿勢への方針転換があったと『アップル自壊』は指摘します。
中国は世界中に門戸を開き、資本主義を受け入れ、民主主義に向かって歩んでいた。
ところが2013年に習が大きく異なる方向へ舵を切った。多国籍企業にとって安息の地だった歳月は終わった。「自主創新」を掲げる習は、中国をテクノロジーの絶対的リーダーにするという目標の一環として、国内の条件を引き締め、各社に圧力をかけて中国に「還元」することを求めた。
(中略)
アップルはものの数週間で、誰にも邪魔されない立場から、製品をブラックリストに載せられることを恐れる立場へと転落したのだ。
ところが2013年に習が大きく異なる方向へ舵を切った。多国籍企業にとって安息の地だった歳月は終わった。「自主創新」を掲げる習は、中国をテクノロジーの絶対的リーダーにするという目標の一環として、国内の条件を引き締め、各社に圧力をかけて中国に「還元」することを求めた。
(中略)
アップルはものの数週間で、誰にも邪魔されない立場から、製品をブラックリストに載せられることを恐れる立場へと転落したのだ。
ビジネスの正当性をどれほど訴えようと、中国共産党の一言で巨大ビジネスが揺らぐ。2013年のバッシング劇は多国籍企業にとって、冷酷な時代の始まりを告げる合図だったと言えるでしょう。
注1 Rebecca Greenfield, “China Has a Way Better iPhone Warranty Than America to Go with Its Apology from Apple,” The Atlantic, April 1, 2013.





