ビジネスの常識では、利益率が低い仕事は誰も引き受けない。しかしなぜか、利益率がほぼゼロに等しい過酷な条件であっても、アップルの受注であれば、世界中のサプライヤーが競って受注を勝ち取ろうとする。この異常な協力関係を成り立たせている「アップルのゆすり(Apple Squeeze)」の恐るべきカラクリとは。「調査報道の奇跡」とまで絶賛された話題の新刊『アップル自壊』から、一部を引用して解説する。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

なぜサプライヤーは「利益ほぼゼロ」でもアップルに従うのか?「アップルのゆすり」の脅威的なカラクリPhoto: Adobe Stock

「心が折れるような低い利益率」でも仕事が成り立つ理由

 アップルが叩き出す異次元の高利益率の裏には、サプライヤーを徹底的に鍛え上げつつ、容赦なく価格を削り落とす冷徹なシステムが存在する。

 なぜサプライヤーは文句を言いながらも離れられないのか。そのメカニズムを『アップル自壊』は徹底解剖している。

 アップルのエンジニアリングチームと生産事業チームが現地提携企業を厳しく訓練し、それを製造のノウハウ、とりわけ、最高基準の品質を維持しながら効率的に生産規模を拡大させる方法を提供する。
 その見返りに現地サプライヤーは、アップルの要求する莫大な生産台数から利益が得られることを承知した上で、心が折れるような低い利益率で仕事をする。
 またその新たなスキルを使えば、ほかの顧客からの受注を勝ち取って、同様の仕事に対してもっと高い代金を請求できる。
 その結果2016年のiPhoneの利益率が33%だったのに対し、中国のライバルブランドのオッポ、ビーボ、シャオミはそれぞれ7%、6%、2%にとどまった。
 要するに、アップルが業界最高の利益率を達成した秘訣は「アップルのゆすり」にあったのだ。各サプライヤーがこの一見不公平な関係性に甘んじたのは、利益よりもとらえがたいがもっと貴重なものを手に入れたからだ。
――『アップル自壊』より

 新製品発売までの何週間にも何か月にもわたって毎日何時間も、アップルの最高のエンジニアから指導料無料で直接訓練を受けられる。そこで得られたスキルで、ほかの顧客から受注を高い代金で勝ち取る。サプライヤーが低い利益率にもかかわらずアップルと仕事をしたがるのは、そのようなカラクリがあったのだ。