できたての食べ物はおいしい。温かいものは温かいうちに食べたい。食べ物の温度は意外と勢いよく下がっていく。そのために油断すると冷めたものを食べることになる。
美人は温かいものをいいタイミングで食べる。口の中で温かさを感じると自然と顔の表情は柔らかくなる。その瞬間に「美人のもと」が発生するのではないだろうか。冷めてしまってはその柔らかな表情の時間がなくなってしまう。自然と温かな瞬間を大切にしている。
レストランで雑談ばかりして、せっかくの料理を放置して、冷めてしまってから食べている人がいる。料理を忘れているわけではなく、相手が手をつけないので、なんとなく自分も手をつけない状態が続いてしまっているような場である。たいてい、そういうテーブルには美人がいない。
さて、「美人のもと」をつくる温かいものであるが、危険なこともある。熱すぎる時だ。ほどよい温かさだと思ったら火傷しそうな熱さだったという経験は誰にでもあるだろう。たとえば唐揚。噛んでみると中から熱い汁が出てくる。揚げ物は中にマグマが潜んでいることがある。吐き出したいくらい熱いこともある。しかし、口から溶岩を出すわけにはいかない。
そこで「はふはふ」する。行儀がいいとは言えないが、熱さと戦う姿は微笑ましい。熱さの次にくる温かい「美人のもと」を待つ。「はふはふ」の瞬間に口が開いてしまうので、口元をさりげなく隠す。この「はふはふ」が上手にできると「美人のもと」を上手に摂取できるはずである。
「はふはふ」が下手な人がいる。熱いのに無理して食べてしまおうとする人だ。熱いのに口から熱を逃がさず、口を閉めようとする。するとさらに熱いので、鼻から熱を排出しようとする。下手な人は鼻の穴が異常に大きくなる。鼻が煙突になり、熱より先に開いた鼻の穴から「美人のもと」が飛び出していく。
熱いものが「美人のもと」になる瞬間は短い。その瞬間を知り、上手に取り入れる。その瞬間を意識するだけで美人をつくる食事ができるはずだ。