私は、最大の懸案は今回の危機の背景的要因となったグローバルインバランス(世界経済の不均衡)の解消だと考えている。アジア、特に中国が米国の経常赤字をファイナンスする構図は維持可能ではない。米国の過剰消費は改め、その一方で中国は社会保険や教育のセーフティネットを整備し消費を喚起しなければならない。その意味で、先のG20の声明が、不均衡解消の必要性に言及したことは正しい。後は、特に米国と中国が想像力を駆使して対策を考え、実際に行動を起こすことだ。最悪のシナリオは、今回の危機を一過性の地震と捉え、壁から落ちた絵や倒れた家具を元に戻せば大丈夫といった自己暗示にかかって、変化を先延ばしすることだ。

日本は中国を中心に回り始めた
世界経済新秩序の敗者か

―ところで、先ほど、債務危機が今後懸念される国に日本を含めなかったが、OECDによれば、日本政府の粗債務残高は2010年にGDP比で200%、純債務でも同100%にまで悪化する見通しだ。1400兆円の個人金融資産があるとはいえ、少子高齢化が急速に進んでいることを考えると、財政の持続可能性に関してとても楽観できる状況にはない。

 言及しなかっただけで、長期的に見れば、もちろん、欧米諸国同様に債務危機に陥る可能性はある。少子高齢化や人口減少の速度を考えれば、この水準の債務をいつまでも抱えていられるものではない。

 この点については、日本政府に対して二つのアドバイスをしたい。ひとつは、国債の満期構成を長期化させることだ。繰り返すが、危機は来る。短期金利が実質ゼロだからといって、短期でつなぐ誘惑に負けてはならない。たとえ高くついたり、一時的に財政赤字の拡大を招いたとしても、満期構成の長期化は危機の第二波に対する安い保険となる。

 第二に、2%程度のインフレを目指すべきだ。債権者に下落した通貨価値での返済を押しつけるインフレは、債務問題のフェアな解決法とは言えないが、債務負担を軽減させる有効な手段であることは明らかだ。