書籍の有料電子データ化が禁止に
残念な「自炊代行」差し止め判決

 9月30日、東京地方裁判所は書籍を電子データ化することを有料で請け負う「自炊代行」の適否が争われた訴訟に対して、東京都内の代行業者2社による著作権(複製権)侵害を認めて、複製の差し止めと合計140万円の損害賠償の支払いを命じた。

 業者側は、「顧客の代わりに複製を補助しているだけだ」と主張したが、東京地裁は「顧客は本を送付した後の作業に全く関与せず、業者が主体となって複製を行っていると判断し、法律が許す『私的複製』ではない」と判断した。

 率直に言って、これで今後、自炊代行業者による複製が不可能になるとすると、大変残念な判決だ。

 いわゆる自炊の場合、すでに本は買われていて、購入代金は支払われているわけで、電子データ化されること自体が直接的に著者にとって不利益になるわけではない。

 一方、データ化された書籍が第三者に有償ないし無償で渡され、流通するようなことがあれば、書籍の売り上げにとってマイナスになることは十分考えられる。この場合は、著作権を侵害していることも間違いないし、経済的にも著者の利益を大きく損なっている。

 しかし、電子データ化自体は、個人が私的に、まさに自炊を行ってデータを作る場合にも行われているのであって、自炊を「代行」すること自体が悪いわけではない。

 書籍データを不当に流通させることに関して、その行為を禁止して違反があれば罰するし、もちろん損害賠償の対象にもなる、ということでいいのではないだろうか。この行為を禁止することについては、筆者も反対するつもりは全くない。