Photo by Ryosuke Shimizu

 電子書籍元年――。毎年のように、メディアはそう表現している。

 確かに、AppleのiPadの発売や、アマゾンのKindle開始など大きなニュースが毎年のようにある。長く出版業界を見つめてきた“玄人”はその状況をどう見ているのだろうか。

 業界紙や専門誌を訪ねるこの連載。4回目は、出版業界・新聞業界を扱う業界誌「文化通信」の星野編集長に話を聞いた。

 文化通信の創業は1946年。出版業界、新聞社などメディア業界の総合専門紙「文化通信」を発行している。東京に15人、大阪や名古屋などを含めれば合計20人ほどの記者を抱え、読者は出版社と新聞社による法人契約が中心だ。

 文化通信は新聞業界のことも扱うが、話を伺った星野編集長は出版業界を担当してきたため、今回は出版業界のことに限って話を進めたい。

デジタル化の一方で出版市場は長期低落が続く

 星野編集長は、1989年に文化通信に入社以来、24年間にわたり、出版業界を取材してきた。その間は、まさしく、「出版×デジタル」という流れが拡大してきた時期と重なる。

 ただし、89年といえば、インターネットもスマートフォンも、タブレットもない。黎明期の当時、出版のデジタル化といえば、CD-ROMのことだった。ベンチャー企業のシナジー幾何学が開発したソフトは新しい出版形態として注目された。