2013年3月、兵庫県小野市で成立した「小野市福祉給付適正化条例」には、近隣住民の目によって「生活保護費でパチンコ」といった問題を解決し、同時に、生活保護の申請に至らずにいる生活困窮者を支援するという内容が含まれていた。条例を提案・賛成する立場からは期待が高く、同時に「相互監視の制度化か」といった批判も大きかった。

同条例は4月1日に施行されている。半年後の現在、同条例はどのように運用され、どのような効果を挙げているであろうか? 

今回は前回につづき、そんな条例を生んだ小野市の様子を著者が見たままの形でお伝えしたい。

大きな反響を呼んだ
「小野市福祉給付等適正化条例」とは?

市民約5万人の生活を支える小野市役所。職員数は542名(正規職員のみ)
Photo by Yoshiko Miwa

 今回は前回に引き続き、兵庫県・小野市の「小野市福祉給付等適正化条例(以下、適正化条例)」のその後について、舞台となっている小野市がどのような地域であるかとともに紹介したい。

 この条例は、2013年3月27日に成立し、4月1日から施行された。内容は、生活保護・就学支援など、公的福祉制度に基づいて現金の給付を受けている住民に対して、いわゆる「不正受給」の防止、遊戯・遊興・賭博等への出費の抑制を行うというものである。また、生活保護を必要とする住民を発見し、保護につなぐ内容も含まれている。それらの実現は、市民および地域社会の構成員が、市または民生委員に情報を提供することによって行うとしている(条例全文)。このため、「監視条例」「密告条例」とも呼ばれ、賛否ともども多様な反響を呼んだ。なお、この条例が成立した当時の事情と問題点については、本連載で過去2回にわたってレポートしている(政策ウォッチ編・第18回政策ウォッチ編・第19回)。

 とにもかくにも施行が始まり、半年が経過した適正化条例だが、その後の新聞等での報道によると、それほど多くの情報提供が行われたわけでもないようだ。たとえば神戸新聞では、以下のように報道されている。

福祉給付適正化条例、市民の情報提供5件 小野市
 
 生活保護や児童扶養手当などの受給者がパチンコなどで過度に浪費することを禁じ、不正受給や浪費などの情報提供を市民に求める「福祉給付制度適正化条例」を制定した兵庫県小野市は23日、4月の施行からこれまでに市民から寄せられた情報が5件だったことを明らかにした。3件は過度の浪費に関する情報だったが、うち2件は受給者ではなかった。
(略)
 市によると、情報提供5件は全て4月中。うち2件が生活困窮に関する情報で、1件は金融資産があるために保護は適用されず、もう1件は本人に受給の申請意思がないという。
 過度の浪費に関する情報については、1件が「アルコールをよく飲んでいる」とする内容で、市が以前から指導していた受給者だった。市はその後、重点的に訪問や面会を行い、現在は改善しているという。残り2件は「パチンコ店でよく見かける」などとする情報だったが、情報を提供された人は、いずれも生活保護などを受給していなかったという。
(略)