11月10日、科学や文明の発展などに貢献した人を顕彰する「第29回京都賞」(稲盛財団主催)の授賞式が行われた。先端技術部門で受賞したロバート・ヒース・デナード博士(米IBMトーマス・J・ワトソン研究所IBMフェロー)が週刊ダイヤモンドのインタビューに答えた。パソコンなどの電子機器でデータを記憶する半導体メモリ「DRAM」の基本構造を発明した電子工学者である。(「週刊ダイヤモンド」編集部 深澤 献)
――企業の成長にイノベーションが必要であることは言うまでもありませんが、イノベーションにはまったく新しいものをゼロから生み出すということと、それを改良・改善していくという2つのアプローチがあると思います。デナードさんは明らかに前者です。そして、日本企業は一般に後者が得意で、かねて「米国が発明し、日本が改良する」などと言われてきました。このような見方について、どう思いますか。
まったく新しいものをスタートさせることは、極めて稀で珍しいことではないかと思います。つまり、進化を起こすということですから。
しかし、後者のイノベーションも間違いなくイノベーションです。どのようなプロセスであっても、プロセス自体が進んでいく中で、それぞれの段階でイノベーションがあると、私は考えます。日本や日本企業もそういう意味では、マイクロエレクトロニクスの分野におけるイノベーションに非常に大きく責任を果たしている存在です。
実際、DRAMのセル構造のイノベーションにおいては、「折返しデータ線配置セル」「トレンチ・キャパシタセル」、「スタック・キャパシタセル」の三つの発明が非常に重要な役割を果たしており、それぞれを発明した伊藤清男博士(日立製作所)、角南英夫博士(広島大学)、小柳光正博士(東北大学)をはじめ、今日の私たちの状態があるのは、彼らを含む沢山の人達によるものです。
また、日本企業の製造力、ものづくりの力は賞賛に値するものと思います。そしてそれは米国でも広く、高く認められています。米国の企業はむしろ、ものづくりの力では日本企業より遅れていると言われています。これは、米国企業で自動化の技術が進んでいないという意味ではありません。日本企業は研究開発から製造というさまざまな分野を統括してマネジメントする能力に長けていると理解しています。