前回、ダイナミックフレームワーキングにおける目的、範囲、切り口について解説しました。この中でも、切り口はダイナミックフレームワーキングにおいて重要な役割を果たします。なぜなら、切り口こそがイノベーションのコンセプトに直結するからです。さまざまな切り口を丁寧に見ていくことで、イノベーションにつながるフレームワークを探しだすのですが、そのプロセスについて以下の「ロボットの演習」で見てみましょう。
●「ロボットの演習」
<ロボットがいて、子どもがいて、ある環境で何かを学ばせる、ということを条件にして、学習のパフォーマンスが向上するイノベーティブなことを考えてください>
この演習は実際のワークショップで行ったもので、数人のチームとなって取り組んでもらいました。最初に、メンバーそれぞれがアイデアを考えて、そこから切り口を見いだします。その後、メンバー同士で、アイデアや切り口を参考にし合いながら、そこから極端なアイデアを考えることでフレームワークを見つけていきました。そのワークショップでのおもしろい回答例をいくつか紹介しましょう。
①「頼りないロボットを教える」
子どもが、最近習ったことを、頭の悪いロボットに教えてあげる。
②「ロボットが調子悪くなる」
子どもが問題を解けなくなるとロボットが調子悪くなり、子どもが勉強できるようになったらロボットが元気になる。
③「教えたロボットを対戦させる」
それぞれの子どもが自分のロボットに学習させて、教えたロボット同士を対戦させる。
④「部屋全体がロボットになっている」
人間型のロボットもいるが、部屋全体がロボットになっており、机、壁、床などもいろいろ教えてくれる。
⑤「数台のロボットが教えてくれる」
スポーツが得意、数学が得意など、さまざまな特徴を持つロボットが、1人の子どもを教えてくれる。
これらの回答例を見ると、いくつか重なった要素があることに気づくでしょう。ロボットと人間の上下関係に着目したり、数台のロボットを使うことを考えたり、ロボットのサイズという概念を扱ったりしています。
アイデアと切り口を
包括的にパターニングしていく
上下関係でみると、ロボットが子どもを教えるというのがまず誰もが考えるアイデアであり、それがバイアスになっていました。ここで子どもとロボットが対等になれば、つながりが強くなります。それを、もっと強くしようと思ったら、①~③のように子どもが上になってロボットが下になるという関係になればよいわけです。
そのような関係性を、ダイアグラムにして見ていけば、さまざまなアイデアが浮かぶでしょう。極端にしてみれば、子どもが部屋に入るとロボットが壊れている、というようなアイデアも考えられます。腕がはずれてロボットが痛くて泣いているような状況もあり得るかもしれません。そのロボットを子どもが修理すれば、子どもは、そのロボットに強いつながりを感じることでしょう。
ロボットの数についても考えるべきです。子どもが1人で、複数のロボットを使うケースも考えられます。さまざまなキャラクタを持った、いろいろなサイズや形をしたロボットが子どもを教えてもよいわけです。そこで関係性について考えてみれば、小さな箱に入っている2台のロボットがケンカしていて、それを子どもが仲裁することで何かを学ぶというアイデアもあるでしょう。
このように、上下関係、人数、サイズなどの切り口を見つけて、それらの関係性についてさまざまな可能性を探っていきます。このとき、時間の許す限り、できるだけ包括的に探り出して、イノベーションにつながるフレームワークを見つけだしてください。フレームワークからバイアスを崩すわけですが、それについては次のケースで説明します。