政府は、29日の閣議で、企業統治の強化策を盛り込んだ会社法改正案を決定した。焦点だった社外取締役の設置義務付けは見送ったが、附則に法施行から2年後に再検討すると明記した(11月29日日経新聞夕刊)。社外取締役選任の義務化には経済界が反対していたとされるが、何が反対の理由だったのだろうか。
主要企業の89%が導入、
全体では62%
その前に、わが国において社外取締役の導入はどの程度進んでいるのか。
産経ニュース(2013.7.11)によると、日経225社のうち6月に株主総会を開催した200社について、三菱UFJ信託銀行が調べたところ、導入企業は総会前から23社(11.5ポイント)増えて178社(89%)、複数の社外取締役を置く会社も9社(4.5ポイント)増え、128社(64%)となっていた。また、野村證券が独自に選んだ300社を対象に調べたところ、社外取締役を新たに選任した企業では、経営トップの取締役選任案に賛成票を投じた株主の比率が94.5%だったのに対し、選任しなかった企業では83.5%と10ポイント以上の差がついた。これには、不選任企業の経営トップ選任案には反対するよう、アメリカの大手議決権行使助言会社が推奨していたことが影響したようだ。
また、日本取締役協会のレポート(上場企業のコーポレート・ガバナンス調査、2013年8月1日)によると、東証1部の1752社のうち62.2%を占める1090社が社外取締役を選任しており、社外取締役の人数は3人以上が13.4%、2人が17.0%、1人が31.8%、0人が37.8%となっている(10年前の2004年は0人企業が70.1%を占めていた)。なお、社外取締役を選任している1090社のうち、819社が独立取締役を選任している。
いずれにせよ、こうした実態を見ると、社外取締役を置くことは、すでに広くわが国社会、市場のコンセンサスとなっているように思われる。では、経済界の反対理由は奈辺にあるのか。
経済界を代表する経団連の見解は次の通りである(経団連タイムス2012.1.26)。
「経営への適正な監督の可否は、社外取締役であるか否かといった形式的な属性ではなく、個々人の資質や倫理観といった実質により決まる。社外取締役は各社が有用であると判断し、適切な資質等を備えた人材が得られる場合に自主的に選任すべきものであり、一律の義務付けは、各社に適したガバナンス体制の構築を制約する。そのため、義務付けには反対である。」