健康寿命を延ばす方法を医師10人に尋ねたところ、答えは異口同音に「働くこと」であった(写真はイメージです)

 僕は昨年8月に出版した「日本の未来を考えよう」の中で次のように書いた。「少ない医療費(≒G7の中では、医療費が最もかかるアメリカ、2番手であるフランス・ドイツ・カナダに次ぐ第3グループが日本・連合王国・イタリア)で世界一の長寿国を実現している日本は、これまでは非常に効率のいい医療制度を持っていた(P180)」と。

 ところが、8月4日に医療経済研究機構が公表した「OECD基準による日本の保健医療支出について」を読んでびっくりした。OECDの新基準(A system of Health Accounts 2011)に準拠して日本の保健医療支出を計算するとわが国の医療費はアメリカ、スイスに次いで世界第3位となり、G7の中ではむしろ医療費のかかる方の国になってしまっていたのである。

旧基準と新基準では6兆円もの開き

 まず、OECD35ヵ国の2014年度のデータを虚心坦懐に眺めてみよう。

 これを1人当たり保健医療支出に置き換えると次の通りとなる。

 わが国の2014年度の保健医療支出は旧基準でみると49兆2059億円だが、新基準でみると55兆3511億円と実に6兆円以上も上振れする。新基準と旧基準の主な差は、食事・入浴等のADL(Activities of daily living、日常生活動作)に関する介護サービスが計上されたこと等によるもので、先進国の中で最も高齢化が進んでいるわが国が直撃された形となっている。

 もっとも、諸外国が新基準に対してどのような対応を行ったかについてはまだ不明確なところもあるので、一喜一憂したり大袈裟に騒ぎ立てたりする必要はないだろう。ただG7の中で医療費の少ない国という思い込みだけは捨てたほうがいいと考える。新基準をベースに、わが国のこれからの医療制度の在り方を、一旦ゼロクリアして考え直すいい機会が与えられたと思えば、それでいいのではないか。