2013年を代表する高視聴率ドラマ『半沢直樹』の影響は今も続いている。メディアの調査などによると、ビジネスマンの中には、「半沢のような生き方に憧れる」と公言する人も少なくないようだ。しかし、半沢のように尊大で、モーレツに出世を目指し、自分を貶めようとする上司や同僚への「倍返し」を狙う生き方だけが、ビジネスマンの本懐なのだろうか。10月中旬、国民的人気アニメ『アンパンマン』の原作者で漫画家のやなせたかしさんの訃報が飛び来んで来た。普段は弱くて優しいアンパンマンは、いざというときに我が身を犠牲にしてみんなを守るために奮闘する、半沢とは全くイメージの違うヒーローだ。そのキャラ設定には、「力こそが正義」という風潮が強まった現代社会に対するやなせさんの警鐘が、色濃く読み取れる。企業社会が個を中心とした実力至上主義に傾き、枯れた職場が増えつつある今だからこそ、改めてそんな社員が見直されてもいいのではないか。ビジネスマンへの徹底リサーチを基に「アンパンマン社員」の人材価値を研究する。(取材・文/プレスラボ)

「倍返し」だけが本懐なのか?
半沢直樹に憧れるビジネスマンたち

「やられたらやり返す、倍返しだ!」

 これは、2013年を代表する高視聴率ドラマ『半沢直樹』の中で、俳優の堺雅人さんが演じる型破りなバンカー・半沢直樹が口にした決めゼリフだ。今月初旬に発表された『2013 ユーキャン新語・流行語大賞』で、「今でしょ!」「じぇじぇじぇ」「お・も・て・な・し」と共に大賞を受賞し、今年人々の心に最も焼きついた流行語の1つとなった。

「半沢効果」は終わることを知らない。アベノミクスによる景気回復期待も相まって、不況で縮こまっていた世のビジネスマンの溜飲を下げる原動力となった。ドラマ終了から数ヵ月が経つが、原作本は未だに売れ続け、雑誌では「半沢直樹のような生き方」や「倍返し」を肯定的に捉える記事も目につく。

 実際、メディアの調査などによると、世のビジネスマンの中には、「半沢のような仕事の仕方や生き方に憧れる」と公言する人も少なくないようだ。