一人当りの賃金が低下を続けてきた背景には、「低賃金雇用者」の増加もある。若年層や女性を中心とする非正規雇用やパートタイムの増加は、統計上、平均賃金を引き下げる方向に作用する。現に、アベノミクスのもとで失業率は改善傾向にあるが、平均賃金は横ばいで推移している。これは、雇用の回復が低賃金労働に偏っていることを意味している。

 ベアやボーナスの行方はもちろん重要だが、女性の就労抑制の主要因である税・社会保障制度(配偶者控除と第3号被保険者制度)の見直しの議論も開始すべきである。女性が所得の増加をより積極的に求めるインセンティブを整備することが、デフレ克服の一助にもなろう。

⑤遠すぎず近すぎない「7年」間

東京オリンピック・パラリンピック開催は、目標を立てるのに遠すぎず近すぎない「7年」後だ。日本の数多い課題解決を実現する最大にして最後のチャンスである。

 1964年は、日本経済は豊富な労働力人口に支えられた高度成長期にあったが、2020年の大会は、超高齢化が進展した成熟国として迎える。成熟国が高度成長期のような成長路線を再現することは難しい。しかし、人口減、医療、環境・エネルギー問題など、日本が抱える積年の課題解決に必要なイノベーションを起こし、顕在化していない市場を開拓し、結果として持続的な成長へとつなげることは可能だ。どんな困難な時代にも、チャレンジする者が報われる仕組みさえあれば、イノベーターは必ず現れる。

 14年は、オリンピック・パラリンピックの準備元年であるとともに、日本が目指すべき未来社会の実現に向けて、確かな一歩を踏み出す年とすべきである。