原子力は危険だってわかっていれば、想定はできるはずですよ。実際に東京電力は震災前に、いまの想定では津波対策は不十分だって認識していたんだから。でも費用の問題で後回しにされていた。想定はできていたのに、対処をしなかった。

 避難誘導も何もできていなかったよね。屋内退避とか言われたって、何も知らされずに家でじっとなんかしていられませんよ、普通。

――JCO臨界事故の教訓は何も活かされていなかったんですね。

 活かすって、日本人は過去の教訓を活かすなんていうことができる民族じゃないんだよ。目の前の利益ばかりを追う民族ですよ。アメリカは活かしていたと思うよ。メルトダウンが予想されたらすぐに福島第一原発から半径80キロメートル以内は避難するように指示を出した。それが常識だよ。

 彼らの持っている前提っていうのは、まったく非科学的だ。だって、「全電源喪失が起きても短期間で復旧するから想定する必要はない」という認識なんだから。原子力防災指針には「原子炉は多重に防御されているから、住民避難が必要になるような事態は起こらない」となっている。科学的な精神があったら、そんな前提は持てないよ。

 原子力防災指針のなかには「仮想事故」っていう欄があって、最悪の事態を想定して、どう対処するのかっていうことを書くんだけど、そこには炉心溶融が起きて放射性物質が外部に大量に放出されるということが書いてある。でも、脚注がその下に書いてあって、そこには「これは仮想事故だから具体的な対策は必要ない」って書いてあったな。意味ないんだよ、まったく(笑)。対策をしたら、えらいカネがかかるから止めておきましょう、っていうことなんだよ。すべてにおいてそう。

即ゼロじゃなきゃ
新しいものは生まれない

――専門家のなかからは、原発は動かさざるを得ないという声が上がっています。

 何でですか? 原発動かしたら、本当に電気代安くなるんですか? 本当になるんですかね……。それは疑問ですよ。元に戻るんですか、電気代。電気代が高いのは全部原発が止まっているせいなのか。新しいことに挑戦する気はないのかね、この国は。