金融危機で株式市場が混乱しているときこそ、冷静に銘柄を選別する目が求められる。割安株や優良株などにも不安が広がり売り込まれる状況に対して冷静なスタンスで臨めば、市場が落ち着きを取り戻していく場面で、魅力ある銘柄のいち早い戻りが期待できる。
ただし、割安株を探す投資尺度選びには細心の注意が必要だ。先行き不透明感が高い環境で、投資尺度も信頼性が低下している。
その代表が株価÷予想EPS(1株当たり予想利益)で求められるPERだ。
PERは株価分にかかる投資資金を利益で回収するにはどれくらいの年限を要するかを意味するが、企業業績悪化が見込まれ、予想EPSが不透明な現在のような状況では利用しにくい。
景気後退の場面では、株価÷実績BPS(1株当たり純資産)で計算されるPBRのほうが効果的だ。EPSよりもBPSのほうが評価額に信頼性があるからだ。
足元では、このPBR1倍割れ銘柄が急増している。2008年10月末で東証1部上場企業の73.9%が1倍割れ、つまりは企業が解散して資産を売却した場合の残った価値を、株価が下回っている。
ただBPSについても注意がある。BPSの信頼性も絶対ではない。足元では土地等の実物資産の価格も下げてきており、決算書で公表された値より評価が下がっている可能性がある。
そこでPBRだけでなく「資産の質」を示す投資尺度と合わせて銘柄を選ぶ必要がある。質のよしあしのモノサシは、平たくいえば「足元の数年間に企業が増資などで集めたおカネ」だ。
米ファイナンス界では、こうした資金は多くの企業で効率的な企業活動に使われない傾向が高いと報告されている。