地方に講演にうかがったりすると「東京は景気もよく若い人が多くていいですね。地方は、それはもう疲弊して大変です」などと言われることが多い。「どうしたら地域おこしがうまくいきますか」などともよく聞かれる。そこで今回は、地域おこしの枠組みについて考えてみたい。

大原則は「件数×単価」

 古今東西を通じて、すべての生業の大原則は、「件数×単価を最大化」することにある。これは普遍的・絶対的な真実である。ひとつの地域であれ、ひとつの施設であれ、たくさんの人(件数)が訪れて、たくさんお金を落とせば(単価)、その地域や施設は潤うことになる。

 例えば、2007年から始まった東京マラソンは、3万6000人のランナーが走り、それを支えるボランティアは1万人以上、見守る観衆は172万人を超えると言われている。これだけ多くの人が集まれば、例えば飲み物だけでも膨大な量が消費されるだろう。交通網が規制されるにもかかわらず、タクシー業界も喜んでいるという。それは、選手を応援する人が頻繁にタクシーを使って移動するからだ、というのだ。東京マラソンは、まさに、件数×単価の原則をものの見事に具現していると言えよう。ここに、地域おこしの大きなヒントがいくつも隠されている、と考える。

多くの人を集める方法

 地域おこしのためには、まず、多くの人を集める必要がある。では、多くの人が集まる誘因は何か。それは面白いこと(≒ワクワクすること)とアクセスが便利なことではないか。ワクワクする場所(例えばディズニーランドや世界遺産)や、ワクワクする催し(東京マラソンやお祭りなど)があれば、人は何となく行きたくなるものだ。

 場所(いわゆる「箱モノ」)と催しでは、一般的に言えば後者の方が圧倒的にコストは低くなる。ディズニーランドを作るのは大変だが、東京マラソンなら設備は何も作らなくていい。ハードよりソフトが大切なのだ。ただし、一回性のソフトでは駄目だ。リピート客の多寡が商売の帰趨を決めるように、ワクワクする催しも、リピート客を誘因するような仕掛けを上手に埋め込むことが肝要である。