ついにロジウムと銀の融合に成功

北川 そこで次に何をしたかというと、中山さんの本、『元素戦略』の中でもご紹介していただいた「ロジウムと銀からパラジウムをつくる」というものです。「元素間融合」でよく出てくる話題です。

中山 私の本の中では「北川マジック」と呼ばせていただき、冒頭で紹介させていただきました。「元素戦略」を理解するうえで一番わかりやすい例ですからね。

北川 宣伝していただき、ありがとうございます(笑)。
 さて、今度はロジウム(原子番号45)と銀(47)を混ぜて、真ん中のパラジウム(46)をつくってみよう、という話です。そこでちょうど研究室に入ってきたばかりの4年生の草田康平君という学生にテーマを出しました。「君はロジウムと銀を混ぜてパラジウムをつくりなさい」というシンプルなミッションです。

中山 その学生が混ぜることに成功したんですか。

北川 そうです。ただし、成功するのに2年半かかりました。彼は最初、ドクターに行くと言っていたのですが、失敗続きだったので、就職しようか迷いだし、しかも修士論文を書けない。ぎりぎり、修士2年の夏になって、やっと混ざりました。いやぁ、ホッとしましたよ(笑)。

中山 結果オーライというところでしょうが、この人工パラジウムも水素を吸うんですか。吸うとすると、能力はどのくらいですか。

北川 ロジウムや銀には水素を吸う能力はありません。けれども、混ぜてつくった人工パラジウムは天然パラジウムほどではありませんでしたが、たくさんの水素を吸ってくれました。パラジウムというのは自分の体積の1000倍もの水素を吸いますが、われわれがつくった人工パラジウムは天然パラジウムの半分程度吸ってくれました。このとき、読売新聞の朝刊一面にデカデカと報道されたんです。これが「元素間融合」のデビューとなったわけです。

中山 「元素間融合」の始まりは、白金とパラジウムの水素吸蔵合金の発想から入っていき、その次にロジウムとパラジウムをターゲットにされた、ということですね。

北川 そうです。ロジウムと銀とを混ぜてパラジウムをつくった状態を画像で見てみましょう。この画像に写っている10個の塊は、すべてそれぞれ同一のナノ粒子です。銀は右上のオレンジ色で、ロジウムは左下のグリーン、混ぜてできた人工パラジウムが右下の画像です。周辺にポツポツと見えているのは、1個1個の原子です。こうして見ると、銀とロジウムが原子レベルで完全に混ざっているということがわかります。

中山 新聞トップに大きく報道された理由もよくわかりますね。画期的です。

        ロジウムと銀から人工パラジウムを開発

 


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