小野文明社長
日本マニュファクチャリングサービス 小野文明

 頭は金髪、格好は短パンに雪駄。ふんぞり返って受け答えもいい加減。今から10年ほど前、電子部品工場の生産ラインの仕事に応募してきた若者を面接しているときだった。

 当時、製造メーカーから製造工程の1部を受託する「請負業務」を柱とする会社で営業本部長を務めていた小野文明は、応募者の身なりや態度が許せず、胸ぐらをつかんで怒鳴った。

 「すぐに着替えてこい!」

 相手も収まらず、2人はその場で取っ組み合いのけんかを始め、面接会場は騒然となった。

 しかし、話を聞いてみると、応募者がそうした態度に出るのも無理からぬ理由があった。

 過去に送り込まれた製造現場で、社会保険に加入してもらえなかったり、さまざまな名目で天引きされたり、果ては給料さえ払ってもらえなかったことがたびたびあり、請負会社を信頼できなくなっていたというのだ。

 「当時、勤めていた会社もそうだったが、請負業界全体に労働者を軽視し、弱い者いじめをするような風潮が蔓延していた」と小野は振り返る。

 「いまや請負なしで製造業は成り立たないのに、このままでは労働者もいなくなり、日本の製造業は衰退してしまう」

 危機感を強めた小野は退職を決意。雇用条件を整備した透明性の高い請負事業を手がけようと、1996年に紹介を受けた人材派遣会社に仲間たちと移り、請負の事業部を立ち上げる。

 これが、10月25日、ナスダックに上場した製造請負を主な業務とする日本マニュファクチャリングサービス(nms)の前身となる。

突然受けた社長就任命令
もう売却されたくないと
会社を衣替えしてMBO

 上場までの道のりは決して平坦ではなかった。