固定電話のNTT西日本の100%子会社ながら、携帯電話へ漫画を配信するサービスで、異彩を放っている企業がある。2004年8月に、NTTドコモの「iモード」向けの漫画配信サイト「コミックi」(公式サイト)を開始して以来、翌05年から08年まで過去4年間連続で2ケタ成長を続けるNTTソルマーレだ。
社名の由来は、イタリア語で太陽を意味する「ソーレ」と、海を意味する「マーレ」を足した造語で、太陽には新ビジネスに賭ける情熱、海には豊かなコンテンツ配信のプロ集団という想いを込めている。
実際、公式サイトのランキングでは、ドコモの「iモード」では全部で93ある漫画配信サイトのうち、49ヵ月間トップの座にある。同じく127サイトあるau(KDDI)の「EZweb」でも134週間トップにある、知られざる国内最大手の漫画配信事業者なのだ。
業績は非公開だが、親会社のNTT西日本の経営幹部がポロリと漏らしたところによると、「売上高は約100億円」というから驚く。すでに、海外でもアップルの「App Store」やノキアの「OVI Store」などを通して、28ヵ国に自前の取引システムで漫画を配信する。
そもそもNTTソルマーレは、02年の設立時より、盛り場の街頭端末から消費者が各種のデータを取得して携帯端末で楽しむというサービスを手がけて権利処理のノウハウをため込んできた。この頃、漫画界の重鎮で恩人でもある本宮ひろ志氏との接点ができた。
同社の大橋大樹社長は、当時を振り返る。「最初は漫画の編集者が相手にしてくれなかったが、(本宮ひろ志氏をはじめとした)権利者の作家や代理人の方がたは『小さな画面で読むコマ割の紙芝居形式でも、新たな読者の開拓になるなら……』と協力的だった」。
大ブレークの追い風となったのは、端末の高機能化、通信の高速化、そしてデータ通信のパケット定額制の導入だった。
現在、取り扱う約2万タイトルのうち、たとえば『北斗の拳』では格闘場面で端末がバイブして“衝撃度”を演出する。ほかには、昔の名作もあれば、若い女性が書店で買いにくいエッチな漫画もある。登録会員は、男性が約30%で女性は約70%。毎月1万円以上使う人が1万人近くもいるという。NTT発の新ビジネスにしては、珍しく有望でニッチな“成長株”である。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 池冨 仁)