3月1日にウクライナ・クリミア半島へ軍事介入を開始したロシアは、クリミア併合を成功。話はここで終わらず、4月7日になって、ウクライナ東部のハリコフ州、ドネツク州がクリミアをまねて独立宣言をした。内戦状態に突入したウクライナ情勢を解説する。
ロシア系住民の占拠、立てこもりが頻発
親欧米政権は武力による掃討作戦を開始した
1970年長野県生まれ。モスクワ在住24年の国際関係アナリスト、作家。その独特の分析手法により、数々の予測を的中させている。1996年、日本人で初めて、ソ連時代「外交官・KGBエージェント養成所」と呼ばれたロシア外務省付属「モスクワ国際関係大学」(MGIMO)を卒業(政治学修士)。1999年創刊のメールマガジン「ロシア政治経済ジャーナル」(http://www.mag2.com/m/0000012950html)は現在読者数3万6000人。ロシア関係で日本一の配信部数を誇る。主な著書に「隷属国家日本の岐路」(ダイヤモンド社)、「プーチン最後の聖戦」、「日本自立のためのプーチン最強講義」(共に集英社インターナショナル)など。
ウクライナで内戦が始まる。4月7日、ウクライナ東部のハリコフ州、ドネツク州が独立を宣言した。その後、同じ東部のルガンスク州などの諸都市で、ロシア系住民が州政府関連施設、市役所、警察署、検察庁など要所を占拠し、たてこもる事件が頻発している。
親欧米のウクライナ新政権は、これを「テロ行為」と断定。武力による「掃討作戦を開始する」と宣言した。4月13日には、ドネツク州スラビャンスク市で、実際に「テロ掃討作戦」がはじまり、犠牲者も出はじめている。
ロシアに亡命中のヤヌコビッチ・前ウクライナ大統領は、「内戦がはじまった!」と断言した。
しかも、実際にはウクライナとロシア間の争いには留まらない。ロシアのテレビニュースは、「CIA長官が、ウクライナ新政府に武力行使を命令した!」と報じている。そして、ロシアのチュルキン国連大使は4月14日、国連安保理で、「(米国の)バイデン副大統領は、いつものようにウクライナの大統領に電話し、『武力行使をやめろ!』というべきだ」と述べた。
欧米は、「ロシアがウクライナ東部の暴動を扇動している」とし、ロシアは、「米国が新政権に対して、ロシア系住民虐殺指令を出した」と見ているのだ。ウクライナで始まった内戦は、実は欧米とロシアの“代理戦争”なのである。歴史的背景をおさらいするとともに、欧米の狙いと、ロシアの思惑を解説していこう。
プーチンは、ウクライナ東部を併合するか?
2014年3月、プーチンは世界を驚愕させた。
まず、3月1日、「ロシア系住民の安全確保」を理由に、ウクライナ・クリミア半島への軍事介入を宣言。3月16日、クリミア自治共和国で住民投票が実施され、96.77%が「ロシアへの編入」を支持した。こうしてロシアは、わずか半月あまりで、クリミアを併合することに成功した。
ウクライナ人は嘆き悲しみ、ロシア国民は喜びに沸く。「クリミア併合」で、プーチンの支持率は、年初の60%から82%まで急上昇している。ここまででも驚きだが、話は終わらない。今度は、ウクライナ東部が荒れてきた。ロシア系住民(*)の多い、ウクライナ東部のハリコフ州、ドネツク州が4月7日、「独立」を宣言したのだ。
彼らは、「クリミア」を真似たのである。「独立宣言」の後、「住民投票」を実施し、「ロシアへの編入」を目指す。はたして彼らの願いはかなうのだろうか?ロシアは、クリミアについで、ウクライナ東部を併合するのだろうか?
(*)「ロシア系住民」、(ウクライナの)「ロシア人」は、正確にいうと「ロシア系ウクライナ人」である。しかし、長くなるので、ここでは「ロシア系住民」「ロシア人」を使う。