多すぎる「○○代理」
「沢井社長。ここが製造本部の一番前工程の設計課です。設計課長の安川君です。設計課は設計係と木型係に分かれております。いずれお時間をいただいて詳細にご説明いたしますが、今日はごく要点だけ申し上げます。
設計係は営業部からの注文票にもとづいて方案の設計をいたします。木型係はその設計書によって木型を作ります。ただし、木型製作の大部分は外注しております。
これが設計係長の中村君です。木型係長の山倉君と係長代理の篠原君のデスクがこれですが、本人たちは別棟の木型工場へ行っていて、ただ今ここにはおりません。
後ほど木型工場へご案内した折りにご紹介いたします」
「よろしく……」
立ち上がった管理者たちに沢井と藤村は軽く頭を下げた。
「となりが鋳造課です。これが阿部鋳造課長です。それからこれが八木課長代理です。
もう一人水野君という課長代理がおりますが、ただ今現場のほうへ行っております。
鋳造課には、まず、砂型を作る造型係がありまして、これが山内係長、こちらが下川係長代理です。
作られた砂型に、金属を溶かして注入するわけですが、その金属を溶かす溶解係の田中係長と早川係長代理のデスクがこれで、二人ともただ今現場へ出ております。
溶かした金属──われわれは湯と言っておりますが、その湯を砂型に注入するのが鋳造係です。これが係長の杉村君です。
ここには大崎君と白石君という二人の係長代理がおりますが、二人ともただ今は現場に出ております」
岡田はこのあと仕上課、検査課のラインの二つの課と技術課、工程管理課のスタッフの二つの課へと案内してまわった。
「いやあ、小さな会社のわりにはずいぶん複雑な組織、いや、人の配置なんですね。兼務や代理がいっぱいあって……」
沢井の脇で、藤村がボソッとした口調で、キツイことを言った。
「ハア……」
岡田の顔に一瞬複雑な表情が流れた。
「さあ、先がまだいろいろあるから現場を説明してください」
渋谷が岡田を促した。
「それでは、現場をご案内します」