Mさんのご両親は彼の就職活動に対して過干渉でも不干渉でもない関わり方をしていました。ただ、ご両親が大手企業で働いているという事もあり、Mさんの就職活動は自然と大手企業への志向性となっていきました。

 特に親から勧められた訳ではないそうですが、やはり家庭でも中堅・中小企業のことを知っている人がいないと選択肢には含まれにくいのでしょう。

 就職浪人中も特にアルバイトなどはせずに、大手企業の就職活動に絞って研究をしていたそうです。研究とはいっても、残念ながら就職サイトを眺めるだけで終わっていました。

 これは「ハンデ」とまではいきませんが、他の就職活動中の方と比べて特段有利でもありません。Mさん自身の経歴と、相談を受けたのが5月という事もあり、私はMさんに中堅・中小企業への就職を薦め、相談の末にMさんは大手企業から少しずつ志望企業の視野を広げ始めました。

なぜ中堅・中小企業は人気がないのか

 Mさんが今まで中堅・中小企業への就職活動をしなかったのは、情報が少なかっただけではありません。「中小企業と聞くと、なんか常に忙しくて安定していない気がして…」というのがMさんの気持ちでした。

 実際にMさんだけではなく、こういうイメージを持つ就活生は少なくありません。株式会社ディスコが2013年3月に発行したキャリアリサーチで、2014年3月に卒業予定の全国の大学3年生1365人に行った調査があります。「就職したい中小企業の条件」というアンケートの中で、大手志向学生と非大手志向学生に分けて回答が出ているのですが、大手志向学生の選んだ回答として多かったのは「将来性がある」「給与や賞与が大手に引けをとらない」というものでした。逆に言うと、このコメントからは、そもそも大手企業に対しては将来性や給与があることを前提にしているという事がわかります。

 確かに、「将来性」という意味では中小企業については不安に感じる部分も多いと思います。日々、報じられる事もなく倒産していく会社も非常に多いでしょう。しかし、近年は大手企業でも倒産の危機や大幅な人員削減が進められているのも事実です。業界や扱う商材にもよりますし、一重に大手なだけで生き残れる時代ではなくなっています。

 また「給与や賞与」についてはどうでしょうか。中小企業では満足に生活ができないと思っている方も多いです。実は日本の企業の99%以上が中小企業、という事を考えるとこれもひとえに中小企業の給与では生活ができない、とは限りません。実際に私の知人でも中小企業で高給を貰っている方は多いですし、全ての中小企業が「規模の拡大」を狙っている訳ではありません。

 規模を拡大しない代わりに製品やサービスの収益を高め利益を生もうと考えている企業もあります。まして規模の小さい中ではスペシャリストや幹部の存在は大きくなり、手厚い処遇を受ける事も多くあります。大手企業でしかできない事、そして中小企業だからできる事もあるのです。