インラック人気を背景にタイ貢献党が地滑り的勝利を収めたように、民意を問えばタクシン派は勝利を重ねているにもかかわらず、選挙以外の手段で政権を追われるパターンが続いている。

 タイ政治では憲法裁、軍、枢密院(国王の補佐機関)といった、選挙によらない組織が強力な権限を持つ。選挙をバイパスしてエスタブリッシュメントを動かせる政治力を持つ者が、最終的なキャスティングボートを握っている。シナワット家はその力まで得ることができなかったのである。

 しかし、仮にシナワット家が政界から姿を消しても、政治とカネの問題は残る。野党も「同じ穴のむじな」だからだ。民主党にもアピシット党首をはじめ富豪や企業家が多く、民主党政権は「ミリオネア内閣」と揶揄された。加えて上下両院議員には主要企業の姻戚関係者が少なくなく、財界の代理人ともいわれている。タイがこれからも本来の成長力を維持するためには、まず政治とカネの問題を改革しなければならない。

(川端隆史・SMBC日興証券エコノミスト〈ASEAN担当〉)