成長戦略にも掲げられる地域活性化
農林水産業の「6次産業化」は成功するか?
安倍晋三首相は6月14日、政府内に地域再生を目的とした「地方創生本部」を新設し、自ら本部長に就くとの方針を表明した。省庁横断で地域活性化策を打ち出し、疲弊した地域経済の再生を目指すものである。アベノミクスの「第三の矢」となる新成長戦略のメニューの1つだ。
地域活性化は、日本にとっていわば永遠の課題となっている。東京への一極集中が止まらず、その裏表の現象として地方の衰退に歯止めがかからない。こうした流れを変えようと、国はこれまでも様々な地域活性化策を打ち出してきたが、これといった成果を上げられずにいる。色々な政策が浮かんでは空しく消える――。そんなことの繰り返しである。
ここに来て、地域活性化策として盛んに提唱されるようになったのが、地域の農林水産業の「6次産業化」だ。自分たちがつくった産品を自らが加工して商品化し、さらには自らが販売するというものだ。
その先進事例として全国から注目を集めているのが、高知県四万十町の株式会社「四万十ドラマ」だ。クリや茶、コメ、シイタケといった地域の1次産品を加工して商品化し、全国に販売することで地元に外貨と雇用をもたらし、さらには若者の移住をも呼び込んでいるからだ。そんな「四万十ドラマ」に全国各地から視察や研修が殺到している。
ダムのない日本最後の清流と言われる四万十川の中流域に広がる高知県四万十町は、2006年に旧窪川町と旧大正町、それに旧十和村が対等合併して誕生した。人口は約1万8600人(2014年5月末現在)で、町の約87%が林野。川沿いと台地に人家が点在する山村である。
こうした四万十町の中でも山手の旧十和地区(人口約3000人)が、株式会社「四万十ドラマ」の活動拠点となっている。条件不利の典型的な過疎地の山間部である。
ところが、地元の一次産品の生産と加工、販売に力を入れた「四万十ドラマ」は地域の中核企業で、グループ会社は7社(NPO法人と一般社団法人を含む)。年間の総売上高は約4億5000万円に上り、37人もの従業員を抱える。