事業活動を通じて強固なものとなる
ブランドストーリー

 IBMにとって「Smarter Planet」というブランドストーリーは、美辞麗句でも机上の理念でもない。彼らの強みは、実際の事業活動を通じて「Smarter Planet」というブランドストーリーを強固なものにしている点だ。

 ブランドストーリーを事業活動に落とし込む手法として、IBMでは「言語」と「視覚」の二面からアプローチしている。

 まず、言語的な軸になるのは「Smarter ○○」という表現だ。個々の事業領域は「Smarter Analytics」、「Smarter City」、「Smarter Food」、「Smarter Clouds」という具合に、上位概念である「Smarter Planet」を具現化するパートとして表現される。これらの事業領域は、「Smarter Planet」のアイコンを踏襲したスタイルのアイコンとしてデザインされ、視覚的にブランドのツリー構造が直感的に把握できる設計で展開されている。

 この一貫性により、IBMが雑多な事業やプロダクトブランドの集合体ではなく、「Smarter Planet」を実現するための必須の事業統合体であることが伝わってくる。

なぜ日本企業の海外M&Aや複数ブランド管理はうまくいかないのか?――“ブランドストーリー発想”によるマネジメントのすすめ

 ブランドストーリーをぶれなく表現するために、M&Aで数多くそろえたプロダクトブランドの統合・廃止にもためらいはない。IBMでは、非常に認知度の高い被買収プロダクトブランドであっても、独自のロゴやブランドの世界観は採用せず、ストーリーはコーポレートとプロダクトの関係性の中で語ることを徹底している。表計算やグループウエアで有名なロータスブランドでさえ、名称は残したものの、長年親しまれてきたロゴはもはや利用されていない。費用の削減・投資効率の向上のためにプロダクトブランドを廃止することもその目的の一つであると推測されるが、そこには、短期的な財務指標の向上という視点しか持たない旧来のM&Aとは次元の異なる非常に戦略的な意図が感じられる。