データ活用がビジネスの成否を分けるといわれるが、それはITの導入だけで実現できるものではない。成功を手に入れるためには、まずは経営者自身がデータ活用や分析の重要性を認識し、事実に基づいた裏付けを常に求める姿勢を示すことが重要である。
経営者はデータを重視しているか
データ活用や分析に対する企業の取り組みは、昨日今日始まったものではない。コンピュータの商用利用が始まった頃から、経営情報システム(MIS)、意思決定支援システム(DSS)、分析のためのデータ基盤(データウェアハウス)などの歴史を経て、高度な分析が可能となった現在に至るまで長年の間、研究と実践が続けられている。
一方で、企業におけるデータ分析の成熟度(以降、分析力と呼ぶ)は、大きな差がつき始めている。欧米では、分析力を戦略の主軸に据え、これを最大の強みとする企業が登場し、ビジネス上の成果に結びつけている事例が数多く紹介されている。
それは、アマゾンやグーグルのようなネット企業や、オンラインDVDレンタル・サービスを手掛けるネットフリックスのような新興ベンチャー企業だけの話ではない。製造業、金融業、小売業などの伝統的大企業も多く含まれており、プロクター&ギャンブル(P&G)、ウォルマート、フェデックス、マリオット・インターナショナル、ロイヤル・バンク・オブ・カナダなどはその代表格といえる。
トーマス・H・ダベンポート氏は、『分析力を武器とする企業』(日経BP社)で、分析力を武器にするために必要な要素として、戦略、経営者の指導力、企業風土、スキル、データの質、ITなどをあげているが、特に経営者の強いコミットと従業員の意識を含む企業風土が重要であると強調している。
また、分析力を武器とする企業の特徴は、「分析力が戦略的優位性のベースになっている」「分析に組織をあげて取り組んでいる」「経営幹部が分析力の活用に熱心である」「分析力に社運を賭け、戦略の中心に据えている」の4点であると述べている。
データを重視した経営と聞いて、「わが社でも経営会議の際にはさまざまな実績データの報告を受けて経営判断を下している」と胸を張る経営者もいるだろう。しかし、それらは経営会議の報告用に経営企画部門や経理部門のマネージャが、過去(前月末など)の実績値を集計して見やすいように加工したサマリ表でしかない。経営の今現在の実態を示す生データでもなければ、将来を予測するに足るように様々な角度から分析された情報でもない。