2016年4月に電力小売全面自由化が実現する見通しとなり、家庭にも従来の電力会社以外の企業が電気を自由に小売りできるようになる。そのとき何が起こるのか。世界各地で電力システムの運営に実績をもつSAPジャパンの電力部門の責任者である佐藤知成バイスプレジデント、ならびに公益部門のグローバル化を担当する川島浩史プリンシパルに聞いた。(取材・文/ダイヤモンド・オンライン編集部 指田昌夫)
日本の電力システム改革は
海外の半分以下の時間で進める
――日本の電力自由化に向けた電力業界の対応は、どのようなスケジュールで進んでいるのですか。
佐藤 2016年4月の完全自由化が迫り、日本の電力システムの仕組み自体を変えていかなければいけないということで、すでに対応が始まっています。日本政府による細かい制度設計自体がまだできあがっていないのですが、競争の中で各社の電力小売りへの進出検討が始まっています。
SAPは世界各国で電力向けシステムを提供しており、その数は世界2600社以上に上ります。電力小売りだけでも、世界700社以上が顧客です。世界各国の電力自由化もサポートしてしますが、その経験から分かったことは、国が違えば法律も異なり、世論の動向や、もちろん最終的な電気の使われ方も違う。いろいろなことが組み合わさって変化が続いているということです。これらの経験値をさらに強みとするため、SAPでは世界各国の拠点に分散していた電力を含む各業種別の営業、開発部隊を統合して組織を再編しました。
――すでに電力自由化を経験した国と、日本との違いは?
川島 世界市場での経験から見ても、今回の日本の電力自由化は市場の大きさと導入期間の短さでは突出しており、非常に大規模で、かつスピードが求められます。たとえば、EUでの電力自由化は1995年から2009年までの間に段階的に実施されてきました。それに対して日本では、小売り自由化に関してはこれから2年弱、発送電分離に関しても5年程度という、非常にハイペースで進めなければいけません。
佐藤 SAPとしても、日本の電力自由化を支援する準備を進めています。まずは体制作りからで、グローバルの経験を生かすため、シンガポール、アメリカ、ドイツなど世界各地から、いわば「電力自由化のエキスパート」を日本に呼び寄せています。シンガポールに住んでいたアジアパシフィックの電力業種部門の責任者も、日本に引っ越してきました。これは異例のことですが、日本の電力自由化が特別に大きなインパクトがあるため、SAPとして経営資源を集中するためです。