以上、おもてなしで勝負する部分を絞り込む話をしてみましたが、決して「おもてなしに価値が無い」と言っている訳ではないですし、「おもてなしで手 を抜こう」と言うつもりもありません。お伝えしたかったのは、「顧客にとって価値の大きくない作業を省いたり、機械やセルフサービスで代替したりすること で、従業員という希少リソースを、別の新しいおもてなしに活かせますよ」ということです。

 先述した介護リフトでも、反対を押し切って導入してみたら、被介 護者の表情を見ながら対話する余裕が職員の間で生まれているとのこと。※5移乗作業を機械に頼ることで、介護職員にとっては新たなおもてなしを提供する チャンスが生まれているわけです。

 これから日本のサービス現場は深刻な従業員不足に直面します。ずいぶん前から建設や介護の現場では問題が顕在化していますし、最近では外食チェーンの一部で従業員が集まらずに一時閉店を余儀なくされた店が続出しています。別に「アベノミクスだから」「増税前の駆け込み需要があったから」ではなく、これから2020年のオリンピック開催までにも、従業員はますます希少なリソースになっていくはずです。おもてなしの技術を磨くのも大切ですが、本当に従業員が注意を傾けるべきおもてなしはどの辺なのか、それ以外は機械やセルフサービスで代替できないかも、日本のサービス業が今後数年間で急ピッチに実行に移すべき課題の1つです。

 そして現場でおもてなしの好事例が生まれたら、そのおもてなしを他の従業員にも横展開していく。徐々に定型化を進め、自社サービスの標準に組み込んでいく。さらに付加価値の低い作業は効率化して…そうして生まれた従業員の可能性を、次の新しいおもてなしの創出に活かしていく。そんな好循環を回している企業を、いずれ本コラムでもご紹介したいと思っています。

※5 2013年8月27日付 読売新聞「介護の腰痛 リフトで防ぐ」


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