経営×ソーシャル
おもてなしで飯が食えるか?
【第3回】 2014年7月3日
著者・コラム紹介 バックナンバー
山口英彦 [グロービス マネジング・ディレクター、ファカルティ本部長]

「割愛」で顧客満足度を業界トップクラスにできる!?
~おもてなしで頑張らない

 以上、おもてなしで勝負する部分を絞り込む話をしてみましたが、決して「おもてなしに価値が無い」と言っている訳ではないですし、「おもてなしで手 を抜こう」と言うつもりもありません。お伝えしたかったのは、「顧客にとって価値の大きくない作業を省いたり、機械やセルフサービスで代替したりすること で、従業員という希少リソースを、別の新しいおもてなしに活かせますよ」ということです。

 先述した介護リフトでも、反対を押し切って導入してみたら、被介 護者の表情を見ながら対話する余裕が職員の間で生まれているとのこと。※5移乗作業を機械に頼ることで、介護職員にとっては新たなおもてなしを提供する チャンスが生まれているわけです。

 これから日本のサービス現場は深刻な従業員不足に直面します。ずいぶん前から建設や介護の現場では問題が顕在化していますし、最近では外食チェーンの一部で従業員が集まらずに一時閉店を余儀なくされた店が続出しています。別に「アベノミクスだから」「増税前の駆け込み需要があったから」ではなく、これから2020年のオリンピック開催までにも、従業員はますます希少なリソースになっていくはずです。おもてなしの技術を磨くのも大切ですが、本当に従業員が注意を傾けるべきおもてなしはどの辺なのか、それ以外は機械やセルフサービスで代替できないかも、日本のサービス業が今後数年間で急ピッチに実行に移すべき課題の1つです。

 そして現場でおもてなしの好事例が生まれたら、そのおもてなしを他の従業員にも横展開していく。徐々に定型化を進め、自社サービスの標準に組み込んでいく。さらに付加価値の低い作業は効率化して…そうして生まれた従業員の可能性を、次の新しいおもてなしの創出に活かしていく。そんな好循環を回している企業を、いずれ本コラムでもご紹介したいと思っています。

※5 2013年8月27日付 読売新聞「介護の腰痛 リフトで防ぐ」


【お知らせ】
著者・山口英彦の最新刊『サービスを制するものはビジネスを制する』が東洋経済新報社より発売中です。製造業や金融業はじめあらゆる業界にとって必要なサービスの概念、成長の方法、儲けの方法などを様々な事例を挙げながらわかりやすく解説した1冊。本欄と併せ、こちらも是非ご覧ください。

■GLOBIS.JPで人気の記事
マイナンバー制度を活用し、スマホとカード1枚で手続きを全て可能に!(100の行動72)

「eコマース革命が拓く未来」 前編(G1ベンチャー2014) ヤフー・小澤氏×楽天・中島氏×オークファン・武永氏

アイ・ケイ・ケイ(2/4)―地方企業から全国企業への飛躍を支えた理念経営(変節点に見る理念経営)

このコラムはGLOBIS.JPの提供によるものです。

関連記事

山口英彦[グロービス マネジング・ディレクター、ファカルティ本部長]

東京大学経済学部卒業、ロンドン・ビジネススクール経営学修士(MBA、Dean's List表彰)。 東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)、ボストンコンサルティンググループ等を経て、グロービスへ。現在は同社の経営メンバー(マネジング・ディレクター/ファカルティ本部長)を務めながら、サービス、流通、ヘルスケア、エネルギー、メディア、消費財といった業界の大手企業クライアントに対し、戦略立案や営業・マーケティング強化、新規事業開発などの支援・指導をしている。また豊富なコンサルティング経験をもとに、経営戦略分野(新規事業開発、サービス経営、BtoB戦略など)の実務的研究に従事。米国のStrategic Management Society(戦略経営学会)のメンバー。 主著に『法人営業 利益の法則』(ダイヤモンド社)、『サービスを制するものはビジネスを制する』(東洋経済新報社)、『日本の営業2011』(共著、ダイヤモンド社)、『MITスローン・スクール 戦略論』(共訳、東洋経済新報社)。


おもてなしで飯が食えるか?

オリンピック招致の最終プレゼンを契機に、各所で注視されている「おもてなし」。日本人の細やかな心づかいを製品、サービスに反映させて収益向上につなげようと考える企業は多いと思うが、そこに落とし穴はないか?グロービス経営大学院の山口英彦が近著『サービスを制するものはビジネスを制する』のコンセプト等も反映させながら問いかける。

「おもてなしで飯が食えるか?」

⇒バックナンバー一覧