図書館の後ろにある三船山には武雄神社が鎮座する。境内の森には樹高30メートル、樹周20メートルの大楠の木があり、1999年時点では全国で第6位の巨木だとか。人気のパワースポットだ
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――所得を増やすための手段は、やはり企業誘致になりますか。地元に働く「場」がないと、大学進学などで一度地方を離れて行った若者も戻ってきません。

 おかげさまでうちの企業誘致はすごく成功しているんです。この8年間で1100人の規模を呼び込んでいて、例えば隣の市などはそれが200人くらいしかない。その一方で僕らは起業家を集めようと思っているんです。起業家が雇用を生むという形にしたいんですよね。そちらの方が、地元に根っこが生えて強いから。そこも官と一緒にやりましょうということなんです。単にお客様としてきてもらうだけじゃなくて、当事者として一緒にいろんなビジネスをやっていきましょう、って。

――自治体ができることというと、税制優遇とか、土地や建物の提供などですか。

 いやいや何もしなくていいんですよ。うちと一緒に農業の分野をやりませんか、介護の分野をやりませんか、認知症の分野やりませんかと言うだけで、今の武雄だったら人がやってくるから。例えば今度DeNAとプログラミング教育をやるんですけど、DeNAだけではとても回らないので、恐らくプログラマーが集まってくる。「官民一体型」の小学校創設のために提携した「花まる学習会」だってそうですよ。子どもたちと親も集まってくるんだけど、教育者側としていろんなことをビジネスとしてやりたいという人たちがいっぱい集まってくるでしょうね。

 だから官側が仕事の場を提供するんじゃなくて、仕事のきっかけをこちら側でちゃんとビルトインする。あとそこからスピンアウトするのは、集まって来てくれた人たちがやればいいと思うんですよね。そのきっかけとなるファーストキックの部分をつくりたい。これが次のステージですね。

 あともう一つ、武雄の主要産業は農業と観光なので、そこにICTを組み合わせて起業できるような運びにしていきたいですね。そうすると全国応用可能だから。いまそのロールモデルがない。いま日本にあるのは東京モデルだけですもんね。これは地方には応用できません。

 だから我々が試行錯誤して、トライ&エラーをして、地方のロールモデルをつくりたいんですよ。それで僕らは特許申請もしない、すぐ他の人や自治体が応用できるように。僕らは儲ける必要がないから。それは地方出身者の「矜持」ですよ。うちだけ豊かになっても仕方がない。うちの成功例が結果としていろいろな地域に広がるようにしたいんです。