日常風景となったシャッター商店街で
熱弁をふるう「まちゼミ」の伝道師

 シャッター商店街を見て仰天する人は、もはやいないだろう。地方都市ではごくありふれた光景の1つとなっており、珍しいものでもなんでもない。色つき歩道にきれいなアーケード、オブジェが点在するこじゃれた商店街に人影なしといったケースさえ、増えている。

 賑わいはパチンコ屋とコンビニ、それに通りに張り出されたイベント告知のポスターだけというのもよくある。 郊外の大型商業施設に客を奪われ、インターネット販売にも蚕食されている。店主の高齢化も進み、商店街そのものが消えかねない事態となっている。

 もちろん、どの商店街も腕をこまねいていたわけではなく、その逆。いずこも手を変え品を変え、様々な活性化策に取り組んできていたが、成果をあげることなく今に至っているのが実状だ。新たな取り組みを行う度に、疲労感と諦めムードが増すという商店街がほとんどである。

 だが、賑わいや活力を呼び戻している商店街がないわけではない。それも大都会ではなく、地方都市の商店街においてである。3月の土曜日、滋賀県大津市の駅前商店街にお邪魔した。夕方という時間帯ながら人通りはさっぱりで、不気味に思うほど静まり返っていた。

 そんなアーケード街の中に、商店街活性化セミナーの会場があった。ここである人物が2時間ほど講義することを知り、東京から駆け付けたのである。

 商店街活性化セミナーの講師を務めるのは、愛知県岡崎市の松井洋一郎さん(45歳)。岡崎の中心市街地「康生通り」で化粧品店を営む松井さんは、「岡崎まちゼミの会」代表や経済産業省のタウンプロデューサーなどを務める。 「まちゼミ」の伝道師として全国的に知られている人物だ。  

 松井さんは、集まった20人ほどの商店主に向かって語り始めた。中身が濃く、刺激的で面白く、しかも建設的かつ実践的な話ばかりだった。会場内の誰もが松井さんの話に釘付けとなり、2時間があっという間に経過した。