きっかけがつかめなくて、英語の勉強を始めることができない人も同じだ。始めたあとの面倒臭さ、思ったように上達しなかった時の不快感、そういったものを想像してしまうと、やる気がなくなる。将来失敗する自分を視るのが怖くて、逃げているのだ。

通勤の傍らわずか3ヵ月の学習で
TOEICのスコアが200点も伸びた理由

 現在、翻訳の仕事をしている主婦の方にインタビューをしたことがある。翻訳を始める前、彼女は別の仕事で英語を使ったことはあるものの、「もっと英語を上達させたい」「もっとレベルの高い仕事を英語でしたい」と思っていた。

 しかし、当時の彼女は9時~5時の仕事がある上に、3人の子持ちだった。下2人はまだ幼児、乳幼児のため、家にいるときは家事と子どもの世話で、自分のための時間など全くない。英会話教室に通うことなど当然無理で、教材を探すのにも、子どもたちが寝た後に睡眠時間を削って時間をつくる必要があった。

 そんな彼女が唯一自分の時間として見つけたのが、通勤時間だった。大手英語教材会社のビジネス英語コースをやることに決め、片道1時間20分、1日2時間40分、英語を徹底的に聴き、運よく電車で座れたときにはリーティングと読書を行った。

 特にTOEICの勉強をしていたわけではない。ただ、はるか昔にTOEICで600点程度を取ったことは記憶していた。その勉強が完了したある日、彼女の取り組みを見ていた上司が、TOEIC受験を進めてきた。TOEIC用の勉強をしたわけではないので、最初は気が進まなかったものの、試しに受けてみたところ、808点だった。

 実は彼女が勉強していた期間は、たった3ヵ月だけだった。3ヵ月の勉強で200点スコアを上げたことになる。上司は驚いて「○○さん、英語のセンスあるんだねえ」と感心していた。

 実はその上司こそが、「時間がない」「どの教材がいいかわからない」とこぼしていた人物だったのだ。彼には事の本質が見えていない。

 彼女は「できない自分」を直視することに、何の苦痛も抱いていなかった。彼女にインタビューしたとき、筆者は「ヒアリングなどしているときに、何にもわからなくて、自分が情けなくなったという経験はありませんでしたか」と彼女に尋ねたことがある。