「風で織るタオル」にみる
「エネルギーでマーケティング」

【新連載・第1回】<br />「エネルギーマーケティング」とはどういうことか <br />生活者視点の「自由化」の意味と新ビジネスの可能性<br />――横山陽史・博報堂エネルギーマーケティング推進室マーケティングディレクターPhoto: IKEUCHI ORGANIC

 ひとつ、例を挙げましょう。

 愛媛県今治市は全国的に有名なタオルの産地です。ここで創業以来60年以上の歴史を持つIKEUCHI ORGANIC社の製品には、2002年から「風で織るタオル」の愛称がついています。この年から製造過程で使用される電力が、すべて風力発電により賄われるようになったからです。

 風力発電による電力を供給しているのは秋田県の能代風力発電所。IKEUCHI ORGANIC社は四国に本社も工場もあるのですが、同社は2002年から「グリーン電力証書」制度を利用して、能代風力発電所の維持・管理を賄っています。

「グリーン電力証書」とは、通常の電気料金にプレミアム料金を上乗せし、そのプレミアム料金分を再生可能エネルギー発電の補助に用いるというもので、これにより、能代から風力で作られた電力を間接的に購入していることになります。

【新連載・第1回】<br />「エネルギーマーケティング」とはどういうことか <br />生活者視点の「自由化」の意味と新ビジネスの可能性<br />――横山陽史・博報堂エネルギーマーケティング推進室マーケティングディレクターPhoto: IKEUCHI ORGANIC

 通常よりも割高な電力を使っていても、ビジネスとして成り立つのか。実はここには、企業の危機を乗り越えるための経営者の決断と、オリジナリティへの挑戦がありました。

 同社は他社ブランドによる受託製造事業を行っていましたが、2003年、メインの取引先であるブランドが破たんしてしまいました。同社にとって事業の根幹を揺るがす一大事。企業再生を迫られることになります。

 しかし、通常は別のOEM先を探すところを、同社は自社ブランドを軸として再生する道を選択しました。そのカギになったのが、前の年にニューヨークのホームテキスタイルショーで日本製品として初めて受賞したオリジナルのタオル。受賞の理由には企業の環境への取り組みも高く評価されました。

 このオリジナリティの裏付けの柱になったのが、100%風力発電を利用する取り組みで、直接同社の製品にふれた人に大きなインパクトを与えました。

 同社のタオル地にはオーガニックコットンが用いられています。このオーガニックコットンを今後も永続的に供給するには、気候の大変動が大敵となります。地球の温暖化を抑え、将来にわたってオーガニックコットンの増産を図るために、使用する電力として風力由来のものを選び取ったということです。