自宅のPCから自分のポリシーに合った電力会社の電力を購入する――。そんな電気の消費が当たり前になるかもしれない。欧米ではすでにそんな時代になっている(写真はスウェーデンのElskling[エルスクリン]社のウェブサービス画面。詳細は原稿後半に)
Photo:Elskling AB

前回は、「エネルギー自由化」によって生まれる新ビジネスには、「エネルギーマーケティング」の発想が不可欠であることを説明しました。その前提には、生活者のエネルギー選びには、価値観の多様化があるはずだとの考えがあります。さまざまな生活者の価値感に対応すべく供給者側は複数の料金プランを提案。生活者は自らのポリシーに料金プランを重ねて、自分に合ったエネルギー会社を選ぶことになるでしょう。今回は、エネルギー自由化によって生まれる「料金プラン」の可能性とそこから派生する「エネルギーコンサルティング」という新しいサービスについて見ていくことにします。

とくひさ・しんや
博報堂エネルギーマーケティング室兼生活者データマーケティング推進局リテールデータマーケティング部ストラテジックプラニングディレクター。外資系経営コンサルティング会社にて、コンサルティング業務を担当した後、2005年博報堂入社。流通業や消費財メーカー、通信会社等を中心にマーケティング・ コミュニケーション戦略立案/コンサルテングサービスを提供。2011年より博報堂スマートグリッドビジネス推進室(現エネルギーマーケティング推進室)に参加し、電力自由化に関する生活調査や海外企業事例収集などを実施し、顧客企業への商品開発、マーケティング開発などの提案を行っている。

エネルギーに求められるのは
「安さ」だけではない

「エネルギー自由化」に先駆けて、自由化により参入事業者が増えて競争が拡大し、消費者向けのサービスが多様化した先行例として、通信業界があります。

 通信業界は「速さ」や「つながりやすさ」といった質の部分の技術革新競争が進展しましたが、もう一方でユーザー取り込みのためにさまざまな料金プラン、料金サービスが登場しました。夜間割引、家族割引、2年契約、定額料金プランなどのほか、例えば同じ通信会社で固定、携帯、インターネットを契約すると、それらをセットで割り引く制度があります。さらにそのセット割引にケーブルテレビ(CATV)のような隣接業界が入る例もあります。

 これらのバラエティ豊かな割引制度や料金プランの登場は、自由化の成果であることは間違いありません。エネルギー自由化後の電力・ガス料金も、通信と同じような現象が起きると予測されています。

 しかしながら、私たちは、エネルギーについては価格以外にも、生活者のニーズや気持に寄り添ったさまざまなサービスの可能性があると考えています。

 資源エネルギー庁が2014年4月に行った調査(全国20代~60代男女1500サンプル)では、「電力会社の選択時に重視する項目」(複数回答可)を聞いています。1位は、やはり「料金の安さ」で全体の76%でした。逆に言うと、料金だけでは判断しない人が4分の1いるということでもあります。