本連載最終回のテーマは、エネルギーという商品と、他の商品やサービスとの掛け算によるマーケティング戦略についてです。電力やガスという「商品」は誰にとっても生活に必要不可欠だが、購入先を頻繁に変えることはないもの。だからこそ、今まであまり見られなかった他の商品やサービスとの組み合わせやシナジー効果を狙ったマーケティングが、電力小売り完全自由化の後に登場してくるでしょう。電力やガスなどのエネルギーコストの負担を付加価値にすることで、さまざまな商品やサービスに新たなプロモーションチャンスが生まれてくるのです。
挙式・披露宴会場候補のホテルが
「新生活の電力料金を持ちます」と提案
エネルギー自由化は電力という商品にブランドマークが貼られるイメージです。届くインフラ(電線)は同じでも、そこには出自や料金体系の異なる多種多様なブランドがついた電力が流れています。私たちはその中から自分に適したブランドを探して契約することになります。
現時点では一定量以上を購入する需要者(主として事業者)向けの電力のみ自由化されていますが、2016年からの完全自由化では、あらゆる需要者が対象になります。端的に言えば、あらゆる一般家庭が電力会社にとっての営業ターゲットになるということ。
各家庭のコンセントからさまざまなブランドを貼られた電力が得られるというイメージです。コンピュータ制御でブランドごとに課金がなされ、各電力会社の売上になります。
電力会社側からすれば、各家庭のコンセントに自分たちの作った電力を使ってほしい、お客さんとの接点はできる限り多く持ちたい、と考えます。
そうなると、どのようなサービスが生まれるのでしょうか? 接点を持ちたい電力会社は、どのようにしてお客さんを増やそうと策を練るのでしょうか。想像してみましょう。
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学生時代に出会い、遠距離恋愛を経て、結婚が決まったトシヒロさんとユカさん。4月に地方勤務から東京の本社にトシヒロさんが戻ってくるのを機に入籍。同居生活を4月からスタートさせ、挙式は6月にしたいと2人で話しています。2ヵ月後に予定している東京での新生活への準備はもっぱらユカさんの役割になりました。
そんなユカさんは、足を運んださまざまな場所で「電力料金が割安になる」というセールストークを頻繁に聞くことになります。