企業が社内人材の
有効活用に注力し始めた

サイダス営業本部取締役の全大忠氏

「タレントマネジメント・システム」という言葉をご存知だろうか。

 社内人材を有効活用する人事戦略支援ツールのこと。欧米を中心に普及してきたが、日本でも徐々に導入企業が増え始めている。

 サイダスは、国内でクラウド型のタレントマネジメント・システムを開発・提供をしている企業の1社である。同社営業本部取締役の全大忠氏は、最近の業界動向を次のように話す。

「日本でもタレントマネジメントへの関心は急速に高まっています。先日、人材関連の展示会に出展しましたが、当社のブースに3日間で延べ500社以上が訪れました」

 本格的なタレントマネジメント・システムを導入している国内企業はまだ数百社程度というが、今後、爆発的に増えていくかもしれない。

 そもそもタレントマネジメント・システムとは、社員の基本情報をはじめ、業務経験、保有スキル、評価、ポテンシャルなど、さまざまなデータを一元管理し、そのデータを分析することによって、採用や配置、育成、評価、メンタルケアなどの人事戦略に役立てるツールのこと。タレントとは英語で「才能、能力」を意味する。

 たとえば、イオンは国内外の主要子会社約90社を対象に、社員(パートを含む)約42万人の人材データベースをつくるという。評価や海外経験、資格などをデータ化し、グローバルな人材の最適配置、優秀な社員の抜擢、パートの正社員登用などに役立てるのが狙いだ。

 こうしたタレントマネジメント・システムは、人材が勝敗を左右するプロスポーツ界では当たり前のこと。プレイヤーの経歴、身体能力はもちろん、パーソナリティや行動に至るまでデータ化し、そのデータを分析することによって、プレイヤーのグレードを決め、チーム編成に利用している。これを企業でも人事戦略に活用していこうというわけだ。

人材情報の管理は
複雑さを増してきている

 それにしても、なぜここにきてタレントマネジメント・システムが求められているのか。

 昔からある課題の1つは、紙やエクセルによる目標管理から脱却し、人事部の業務効率化を図ることだった。

「紙やエクセルによる管理の場合、社員の尻タタキや集計作業などに追われてしまい、結果を踏まえてどのような人事戦略を立てるか、昇格・昇給にどう連動させるかといった本来の業務が疎かになりがちでした。そうした管理作業をシステム化すれば、本来の業務に集中できます。

 さらに最近では目標管理だけでなく、業務経験やスキル、パーソナリティなどのデータも一元管理し、適材適所の配置や人材開発などにつなげていくタレントマネジメントの機能を併せ持つシステムが注目されるようになってきました」(全氏)